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【オピニオンリーダーに聞く】臨床歯科医と歯科麻酔科医のチーム医療実現と環境の構築

雨宮 啓 藤沢歯科ペリオ・インプラントセンター 院長 Clinical Dental Anesthesiologist Club(CDAC)代表 (あめみや・けい)1999年、東京歯科大学歯学部卒業。2003年、東京歯科大学大学院(歯科麻酔学)修了、歯学博士の学位受領。2003年から白鳥歯科インプラントセンター勤務(白鳥清人院長)。2009年に藤沢歯科ペリオ・インプラントセンターを開設。日本歯科麻酔学会認定医、日本臨床歯周病学会認定医、日本歯周病学会歯周病専門医、日本口腔インプラント学会専門医。2017年にCDACを設立し、代表を務める。
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水. 12 9月 2018

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「臨床歯科麻酔学の重要性と楽しさを、もっと臨床歯科医と患者さんに伝えたい」という思いから、2017年6月、大学の垣根を超えた歯科麻酔科医のスタディーグループ「CDAC(Clinical Dental Anesthesiologist Club)」を立ち上げた藤沢歯科ペリオ・インプラントセンター院長の雨宮啓先生。今回は雨宮先生にCDAC設立までの経緯と活動内容、さらに臨床歯科医と歯科麻酔科医がチーム医療を行うための、画期的なシステムについて伺いました。

時代は医療安全と快適な治療環境を求めている

私が東京歯科大学を卒業した20年前は、すでに日本も高齢化社会を迎え、これからインプラントや歯周病治療など、高齢患者さんへの外科的な対応が増えてくるのではないかという思いがありました。

特に高齢者は高血圧などの基礎疾患をもっている方も多く、そうした方たちが安心して治療を受けられる歯科医師になりたいと思い、大学院の歯科麻酔学講座で4年間学び、全身麻酔や静脈内鎮静法といった全身管理を行いながら、高齢者や手術時のストレスをマネジメントする歯科臨床に専念してきました。

大学院修了後は、インプラント治療を専門とする歯科医院に6年間勤務し、2009年に歯周病とインプラント治療を専門とする当院を開業しました。開院以来の10年間で診てきた患者さんの中には、高齢で基礎疾患をもっている、歯科に通いたくても恐怖心が強くてなかなか通えない、痛いのが苦手なので無痛治療を希望したい、口の中に手やミラーを入れただけでも気持ちが悪くなってしまう、などのさまざまな問題や要望を抱えた方々が多くいることに気づきました。こうした患者さんたちの治療を通し、歯科麻酔学を学んできてよかったと思うと同時に、臨床歯科麻酔学の重要性を実感しながら、時代はすでに歯科治療の快適環境を求めているのだと感じています。

一方で、私のように大学院で歯科麻酔学を学んでも、大学病院を離れると、歯科麻酔科医としての活動の場が少なくなるという現状も事実だと思います。さらに、大学院にいる時は大学発信の情報を得ることができますが、卒業してしまうと専門の情報を得たり、学ぶ環境が少なくなってしまいます。特に歯周病や補綴、インプラント、エンドなどの分野は、大学の講座のみならず臨床のスタディーグループがたくさんあり、ディスカッションできる環境がありますが、歯科麻酔学分野においては、臨床のスタディーグループがひとつもありませんでした。

そこで、歯科麻酔学に関する意見交換や情報発信をできるグループを作ろうと思い立ったのが2016年4月。歯科麻酔科医21名とともに、1年の準備期間を経てCDACの活動をスタートさせました。

 

臨床歯科医と歯科麻酔科医をワンストップでつなぐ

CDACの活動は主に3つあります。まず1つ目が、大学の垣根を超えた、全国で活躍する歯科麻酔科医が勉強する場と、情報交換ができる環境作りです。歯科麻酔学の専門家同士でディスカッションし、「これが歯科麻酔学のスタンダードだ」と納得でき、理解できる、偏りのない情報発信をしていくことと、大学との情報交換や定期開催する勉強会を通じて、歯科麻酔学はもちろん一般歯科臨床にも目を向けて学びを深め、日本を代表するような臨床歯科麻酔科医のコミュニティーとなることを目的としました。

2つ目が、主に講演を通して、臨床歯科麻酔学の正しい情報発信をすることです。毎年6月に「実践的歯科麻酔学」というタイトルでCDAC実習・講演会を開催し、安全で快適な歯科治療を行う上で大切な歯科麻酔学のコンセプトをお伝えしています。良い意味で、CDACメンバーは大学を離れた後に、歯科臨床の現場を経験していますので、臨床家目線で明日から取り組むことのできる臨床歯科麻酔学のスタンダードな情報発信をしていけるのではないかと思います。

3つ目が静脈内鎮静法を全国で活用できる医療連携サポートの環境整備です。歯科麻酔学に関する講演だけでは、明日から開業医の先生が静脈内鎮静法を導入するといっても、知識や技術的に難しい部分があります。臨床の現場で静脈内鎮静法や全身麻酔の依頼が受けられる医療連携サポート(http://www.cdac-masui.com/)を整え、開業医の先生とチーム医療に取り組むことのできるシステムをつくりました。

これは歯科麻酔科医を探すことができる検索サイトで、歯科医院と歯科麻酔科医をマッチングさせるサービスです。例えば開業医の先生が、静脈内鎮静下でのインプラント手術を希望する患者さんの手術日を決めたい場合、患者さんの目の前で、登録歯科麻酔科医のスケジュールが分かるため、手術日がワンストップで決められます。このようなシステムは、日本初の取り組みでしょう。

また、歯科麻酔科医に来てもらう場合、モニターや薬品を揃えていただきたいのですが、最初は何を準備すれば良いか分からないと思いますので、クリニックでは酸素だけ用意していただくと、静脈内鎮静下でのインプラント手術が可能です。つまり大学病院と同じようなチーム医療の実践を患者さんに提供できるようになります。

その上、自分一人で不安を持ちながら手術をするよりも、歯科麻酔科医とチームを組むことで、臨床歯科医は手術に集中でき、医療安全を患者さんに提供することができます。ぜひ活用してほしいと思います。

 

歯科麻酔科医の活躍の場を広げる

「歯科麻酔科医といえばCDAC」と言われるブランドを築いていきたいと思います。まだ始まって1年あまりですが、現在、全国で活躍する30名近くの歯科麻酔科医とともに活動しています。また、医療連携サポートに登録している歯科開業医は約160件と、徐々に増えてきています。また、これからの10年、インプラント手術のみならず、抜歯するにも静脈内鎮静法が当たり前の時代がくるのではないかと思っています。

開業医の先生が静脈内鎮静法を身近に活用できる環境作りと、その先にいる患者さんに、「安全で快適な歯科治療」を受けていただけるように、歯科麻酔科医の存在をアピールしていきたいと考えています。2019年はCDAC監修の「実践的歯科麻酔学」に関する執筆活動も始まりますので講演内容を本にまとめ、発信していきたいと考えています。

また、最近は高齢で基礎疾患をもっていない人でも、「痛みを感じないで治療したい」、「歯医者への恐怖心を何とかして治療してもらいたい」というニーズが増えてきており、歯科麻酔科医の存在意義や医療安全についての、患者さん向けの書籍も必要でしょう。

医療安全と快適な治療環境という時代のニーズに応えていくためにも、これからも優れた歯科麻酔科医のメンバーを集め、全国的に活動を広げるなど、臨床歯科医と患者さんに向けて、さまざまな角度から臨床歯科麻酔学の重要性を伝えていきます。

 

CDACClinical Dental Anesthesiologist Clubとは

大学の垣根を超えた日本トップレベルの技術を持つ臨床歯科麻酔科医のスタディーグループ。日本歯科麻酔学会認定医・専門医30人が所属する(2018年7月現在)。静脈内鎮静法をはじめ歯科麻酔に関する正しい知識と技術を歯科臨床現場に普及させ、医療連携サポートを活用したチーム医療を実現することを目的に、臨床に優れた歯科麻酔科医の専門グループの形成、歯科医療を通じた安全で快適な地域医療への貢献、臨床歯科麻酔学に関する学会・講演会活動、などを中心に活動している。

 

[問合せ先]
CDAC 事務局
藤沢歯科ペリオ・インプラントセンター内(担当:和田)
TEL 0466-26-8541 URL http://www.cdac-masui.com/

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