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【オピニオンリーダーに聞く】学問を通して歯科医療の重要性を国民にアピール

宮崎 隆 昭和大学 副学長・歯学部長 昭和大学 国際交流センター長 昭和大学歯学部歯科保存学講座歯科理工学部門 教授 一般社団法人日本歯学系学会協議会 理事長 (みやざき・たかし) 1978年、東京医科歯科大学歯学部卒業。1984年に東京医科歯科大学大学院歯学研究科を修了。1991年、昭和大学歯学部教授に就任し、現在に至る。2003年から昭和大学歯学部長、2016年から昭和大学副学長。一般社団法人日本歯科理工学会会長(2006年~2008年)、一般社団法人日本デジタル歯科学会会長(2010年~2012年)を歴任したのち、2014年から、一般社団法人日本歯学系学会協議会理事長を務める。
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火. 13 3月 2018

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超高齢社会を迎え、歯科医療は歯科疾患だけでなく、口腔を取り巻く疾患の治療と予防、さらに介護への支援も、社会や国民から求められています。それに応えるためには、医学や他の学問領域との連携、さらに歯学の再構築も必要です。こうした社会の要望を捉えた学術研究を推進し、社会に提言していくために「日本歯学系学会協議会」が設立されました。今回は理事長の宮崎隆先生に、同会の活動内容や歯科医療の国際協力などについてお聞きしました。

日本の歯学系学会を網羅する連絡組織として設立

一般社団法人日本歯学系学会協議会(歯学協)は、文字通り歯学系の学会を会員とした連合体です(カコミ参照)。目的は会員学会の交流を図り、歯学に関わる研究成果や歯科医療の重要性を行政、社会、国民に提言することです。

また我が国には、科学振興政策に直接提言できる国の特別機関として、日本学術会議があります。歯学協は日本学術会議の「第7部会」に設置されていた咬合学、齲蝕学・歯周病学、口腔機能学の3つの研究連絡委員会がルーツです。

21世紀を迎えた当時、社会の変革に合わせ、歯学系の全学会を網羅した連絡組織を設立し、歯学の学術研究を一層推進する機運が高まりました。そこで、2002年にこの3つの委員会の合同会議が開催され、全学会に呼びかけて設立が合意され、翌2003年に設立、2008年から一般社団法人格を取得し、現在に至っています。

一方、日本の歯学界には「歯科医学会」がありますが、これは日本歯科医師会に設置された学術研究組織で、独立法人ではありません。2016年にはこれら歯科医学会の専門分科会を正会員、認定分科会を準会員とする一般社団法人日本歯科医学会連合(学会連合)が発足し、歯科医師会とは独立した学術活動を始めています。

歯学協の特徴は、学会連合のほとんどの学会に加え、日本医学会傘下の口腔外科学会や、医科領域にまたがる口蓋裂学会や摂食嚥下リハビリテーション学会、歯科衛生士や歯科技工士の学会、大学の学内学会など、多岐にわたる学会が加入していることです。生命科学の進歩や多職種連携医療に対応する歯学協では、歯学の枠を超えた幅広い交流が可能となりました。

 

歴代理事長に見る歯学協の活動成果

歯学協の初代理事長は広島大学の赤川安正先生、第2代理事長は東京歯科大学の山根源之先生、そして現在、第3代理事長として私が務めています。

歯学協発足からの15年を振り返ると、国の医療政策や医療人教育政策に大きな改革があり、歯科界は対応に苦慮してきました。その中で、初代の赤川理事長時代には医療問題を検討し、外保連の取り組みを参考に歯学系学会社会保険委員会連合、いわゆる「歯保連」の設立を進め、保険医療に対する意識を変えました。

また、2代目の山根理事長は歯学系学会の専門医制度の検討を推進。当時の医療界の「国民にわかりやすい専門医を」という流れの中で、山根先生は歯科の専門医制度を検討し、シンポジウムなどで提言してきました。その結果、現在は関係諸機関で、歯科の専門医制度を検討しています。

 

これからの歯科界に必要な歯科医の資質とは

第3代の理事長である私は、現在2期目を迎えますが、今、一番力を入れているのは、新しい歯科医療に望まれる人材を育成することです。

超高齢社会になり、歯科医療が国民の生涯の健康増進・維持や、人の尊厳に貢献するためには、歯科界が一丸となって、他の学問領域や職種と連携して取り組む必要があります。しかし、チーム医療や包括的ケアにも、歯科医療が求められているにもかかわらず、一部の大学を除いては、まだ歯科の教育現場では、このような考えが浸透していません。

今後はチーム医療の中で、歯科の独自性を発揮することで存在価値が増し、他職種から尊敬される存在になるのだと思います。こうした質の高い歯科医を育成することが、大学教育に求められています。さらに、現職の歯科医がどこで勉強するかという生涯教育についても、考えていかなければならないでしょう。

そこで歯学協では、例えば「これからの歯科医療を見据えた人材育成」や、「地域包括医療・介護における多職種連携」についての公開シンポジウムを開催しました。今後も幅広い歯科の重要性と、歯科教育の変革の必要性を訴えていきたいと考えています。

 

医療系教育における国際交流と国際協力を推進

最後に昭和大学における、国際交流や国際協力についてお話しします。

社会や経済をはじめ、あらゆる分野でグローバル化が進む中、大学も無縁ではありません。そこで昭和大学では、国際交流や国際協力を推進していくために、国際交流センターを設け(カコミ参照)、私はそこのセンター長も兼務しています。

昭和大学では、学生が専門科目の選択実習として、海外の協定校での体験を推奨しており、毎年多くの学生が当センターのプログラムに参加しています。例えば、医・歯・薬・保健医療学部の1年生は米国・ポートランドに4週間の語学研修に、医学部では2年生がUCLAのサマースクールに参加しています。歯学部は実習が多いためなかなか長期間、海外で研修することができませんが、今年は多くの6年生が選択実習として米国だけでなくアジア各国に研修に行く予定です。

一方、国際協力としてはマダガスカルの口唇口蓋裂診療のために、専門の医療スタッフを派遣するとともに、そこに医・歯・薬・保健医療学部の各学部から、学生代表として一人ずつ参加させています。口唇口蓋裂の診療は歯科の協力なくしては完成しないため、歯学部の学生がチーム医療を学ぶ良い機会にもなっています。

また、当大学では以前から、日本の医療技術を学びたいという海外の医療職も受け入れており、宿舎と奨学金を提供して研修事業を実施してきました。現在、この制度は大学院留学生制度として再整備され、留学生が母国の大学や病院で、医療や教育、研究の発展に貢献しています。

これからも、海外の協定校を増やし、学生の海外実習、研修に力を入れるとともに、海外留学生の受け入れ拡充も図り、医療系教育のグローバルスタンダードを充実させていきたいと考えています。

 

 

日本歯学系学会協議会とは

日本学術会議の中にあった3つの研究連絡委員会が主体となり、歯学の全学会に呼びかけ、2003年9月に設立された。歯学系学会の連携と協力により、広く国民に歯学の学術研究に関する提言を行うとともに、国民の健康と福祉の向上に貢献することを目的としている。2017年7月現在、81の学会が加盟し、シンポジウムや講演会を定期的に開催するなど、日本の歯学に関わる学会を網羅する協議会として活動を続けている。

 

昭和大学国際交流センターとは

医学系総合大学の昭和大学では、早くから研究の国際化が進められ、多くの教育職員や大学院生が国際学会で研究成果を発表し、海外の研究機関に留学してきた。また、日本の医療技術を学びたいという海外の医療職を受け入れてきた歴史がある。こうした国際交流に関わる事業を総合する機関として、1991年4月に、国際交流センターが開設。現在、海外の協定校を増やすとともに、海外からの受け入れも拡充するなど、双方向の国際交流と国際協定を推進している。

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