DT News - Japan - 【オピニオンリーダーに聞く】歯科臨床医のための最大学会、学術大会・総会を開催

Search Dental Tribune

【オピニオンリーダーに聞く】歯科臨床医のための最大学会、学術大会・総会を開催

上田 秀朗 うえだ歯科医院 院長 特定非営利活動法人日本顎咬合学会 理事長 (うえだ・ひであき) 1983年、福岡歯科大学卒業。1987年、北九州市小倉北区でうえだ歯科医院開院。2010年、福岡歯科大学臨床教授就任。2014年、USC(南カリフォルニア大学歯学部)客員教授。日本口腔インプラント学会認定専門医・指導医。2017年7月から、日本顎咬合学会理事長を務める。咬合再構成、インプラントの分野における第一人者。北九州歯学研究会をはじめ、多数のスタディグループに在籍し、多数の著書や論文発表があるほか、セミナーでも数多くの講演を行っている。
Blanc Networks,Inc Japan

Blanc Networks,Inc Japan

火. 26 6月 2018

保存する

会員数約9,000名弱と、歯科臨床系の学会としては日本最大規模の「日本顎咬合学会」は、毎年、学術大会・総会を開催しています。第36回を迎える今年も、「真・顎咬合学 輝け日本の歯科臨床!! ~臨床力の向上による歯科界の活性化~」と題し、6月9日、10日に、東京国際フォーラムで開催されます。そこで学会理事長であり、大会長である上田秀朗先生に、同会の活動内容や理事長としての思い、さらに今年の学術大会の見どころ、聴きどころについてお聞きしました。

歯科臨床医のための臨床に特化した学会

日本顎咬合学会は、咬合についての統合的な観点から、臨床の場で患者さんのニーズに応えられるようにと、1979年に故・保母須弥也先生が「国際ナソロジー学会アジア部会」として設立した後、1982年に「日本顎咬合学会」として発展的に分離独立。2005年にはNPO法人化し、2017年7月から私が第14代理事長に就任しました。

現在、会員数は約9,000名弱と、歯科臨床系の学会としても、歯科学会としても、日本最大規模の学会です。歯科医師のほかにも歯科技工士が約550名、歯科衛生士も約900名が会員となり、歯科専門職として日常の臨床や啓発活動にと、活発に活動しています。

1993年には、顎咬合学とその関連する領域に豊富な知識と経験を有し、日常の臨床でそれを実践している会員歯科医師に認定医の資格を与える「認定医資格制度」を開始しました。

また現在、歯科口腔医療には質の高いチーム医療が求められ、歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士が三位一体となって、同じレベルの知識を共有し、予防、治療、管理を行うことが大切です。そうした考えから、認定医資格制度に続き、認定歯科技工士、認定歯科衛生士制度を立ち上げました。

 

垣根を超え、自由に学び、臨床レベルの向上へ

当学会の目標は、「歯科医学・医療の向上ならびに国民の健康と福祉に寄与する」ことです。そのためには、臨床における歯科治療体系の確立が最重要課題です。当学会では、あらゆる分野のベーシックな治療からアドバンスな治療について、歯科界の中の垣根を超え、さらに大学や医科との連携を図りつつ、自由に勉強できる多様なスタディグループが存在しています。これらグループ同士の交流が、活発に行われているところが大きな特徴となっています。

こうした勉強や活動の集大成が、年1回開催される学術大会・総会です。

また、当学会では会の事業を5カ年計画として実践しています。2012年に渡辺隆史元理事長が「新・顎咬合学」を提唱し、上濱正前理事長で結実しました。そしてこの5年間で、当学会の活動はさまざまなメディアに取り上げられ、歯科界のけん引役となり、「生涯にわたって、よく噛んで食べることが健康長寿の基本である」ことを世間に広く発信してきました。その結果、国民の歯に対する知識と理解は確実に深まったと思います。

そこで昨年からの5カ年計画では、これまでの活動を継承しつつも、それをさらに発展させるものとして、「真・顎咬合学」を制定。これは、全会員に顎咬合学の真髄を理解してもらい、それを臨床で応用することで、国民に顎咬合学会の「真心」を伝え、学会の「真髄」を評価してもらえるように努めてほしいという思いから名付けました。

歯科医の基本は、歯周治療、歯内治療、補綴治療です。こうした基本治療ができて初めて咬合ができ、患者さんがいつまでもよく噛むことができて、よく食べることができます。なおかつ快適できれいな歯が長持ちすることが、私たち臨床医の務めだと思います。そのためには、こうした基本治療に力を入れて、臨床力の底力を上げていく必要があります。

また、高齢化社会を背景に、口の中(オーラル)の機能が低下することで体の衰え(フレイル)につながっていく「オーラルフレイル」をはじめとした、口腔機能と全身との関わりが注目されています。そうした国民の要望と期待に応えるために、会員による「国民の健康な咬合」の育成、維持、再建、管理の実践が不可欠です。私はこれに応えられる会員歯科医師を育成していくことで、社会に貢献したいと考えています。

そして、学会本部と支部との連携充実を図り、「真・顎咬合学」で国民の「健口長寿」と歯科界の発展を目指したいと思います。

 

基本から先進医療まで

歯科技工士、歯科衛生士も対象に

特に若い世代には、次世代の歯科界のけん引役としての役割に期待しています。そのためにも当学会のメインの活動であり、年に1回の歯科臨床医の祭典である学術大会・総会を大いに利用してほしいと思い、ここで第36回大会について紹介いたします。

何よりも、さまざまなジャンルの先生を講師に招いているため、歯内治療や歯周治療の基本治療から審美歯科、咬合再構成、インプラントの合併症におけるトラブルシューティング、セラミックワークやCAD/CAM臨床の最前線まで、幅広く学ぶことができます。

特別講演では、南カリフォルニア大学(USC)歯学部学部長・教授のAvishai Sadan先生をお呼びし、「接着を用いた複合的な修復治療の実際」について、ご自身のデータに基づいて、審美的な治療法を選択するための系統的で科学的な手法を紹介していただきます。

一般の人も聴講できる公開フォーラムでは、今、社会的にも関心の深い「歯周病と全身疾患」について、糖尿病専門医の西田亙先生には「糖尿病予防と長生きの秘訣は歯周病治療にあり!」と題して、日本歯科大学の関野愉先生には「歯周病と全身疾患との関係」について、日本大学歯学部の伊藤公一先生には「歯周病と糖尿病との関連性」について講演していただきます。さらに歯科衛生士の立場から、中澤正絵さんには「歯科衛生士が取り組む全身管理」についてお話しいただきます。

オーラルフレイルのセッションでは、その概念の提唱者である東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢先生に、「オーラルフレイル̶我々医療者は国民に何を伝えるべきなのか̶」と題して講演していただきます。

このほかにも、卒後5年程度の歯科医師の臨床力アップを目的とした「歯内療法の基本」「歯周外科「矯正治療」などの基礎シリーズとしてのテーブルクリニックから、アドバンスシリーズまで網羅したテーブルクリニックを行います。そこでは実際に講師の先生方の手技を見ることができます。他のスタディグループがどのようなことを行っているのか目の当たりにすることで、とてもよい刺激になるのではないでしょうか。さらに会員のポスター発表など、数多く開催されます。

今年は依頼講演が147、会員発表が354で、合計501という、従前の大会の中でも最多数の演題が2日間にわたって開催されます。最初に興味のあるところをプログラムでチェックしておくと、無駄なく回ることができると思います。

また当学会は、歯科医師と歯科技工士、歯科衛生士は三位一体と考えており、本大会でも歯科技工士や歯科衛生士のための教育セミナーが開かれます。私としては歯科技工士にはセラミックワークやCAD/CAMなどを、歯科衛生士には公開フォーラムやインプラント周囲炎への対応を、ぜひ聴講してほしいと思います。

本大会では、必ず興味のあるテーマに出会え、憧れの先生の講演が聴け、垣根を超えた情報交換や交流ができます。クリニックのスタッフ全員で参加できる幅広い内容になっていると思いますので、ぜひ皆さんで参加してください。

To post a reply please login or register
advertisement
advertisement