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【審美性と信頼度の高い診療オプション】 比較的小さいう蝕を治療対象としたコンポジットレジン充塡は,本邦では,そのほとんどが健康保険内にて提供されている。簡便で信頼度の高いボンディングシステムや,操作性の優れたコンポジットレジンの開発を継続してきた歯科材料メーカーのたゆまない努力と,勤勉で良心的な日本の一般歯科臨床家の尽力により,国民にとって廉価で良質な医療を享受できる環境が整っていることは誇るべき成果である。 しかし,よりクオリティの高い診療を希望する患者にトリートメントオプションとして提示されているのは,「ゴールドインレー」「セラミックスインレー」「ハイブリッドセラミックスインレー」など,多くが間接法による修復法となっている。 筆者は,より優れた審美性と信頼度の高い予後を兼ね備えた「自費コンポジットレジン充塡」を読者の診療オプションに加えていただきたいと考え,本稿を執筆している。
直接コンポジットレジン充塡の利点
図1は,下顎第一大臼歯に観察されたアマルガム充塡および隣接面う蝕である。患者が審美的修復を希望した場合に,治療法の選択肢はセラミックスインレー(アンレー),ハイ
ブリッドセラミックスインレー(アンレー),直接コンポジットレジン充塡などが考えられる。しかし,マテリアルの種類だけで,治療法を検討して良いのだろうか。
図2 は,直接コンポジットレジン充塡にて修復後のもので,ClassⅡの充塡が完了している。審美的に間接法と同等の表現がなされている。審美性だけではなく,歯質削除量が
間接法に比べて少量であることは,歯牙寿命を考慮するうえで注目すべき要素で,筆者は相対的に高い評価を与えている。
【図1】 【図2】
歯科医師・患者ともにメリットを享受できる手法
もし,ハイブリッドセラミックスインレーと同等の審美性を備え,安定した予後の期待できる直接コンポジットレジン充塡が提供できるのであれば,その患者側評価は,表に示すように自費ハイブリッドセラミックスインレーを凌駕するものになり,相対的価値は明らかに高い。
医院側から評価すると,診療回数・材料費・技工料金が削減できることから,間接法に比べて医院コストは大幅に節約され,適正な料金設定を行えば医院経営に大きく貢献する。
このように自費コンポジットレジン充塡は,適切に導入されれば歯科医師・患者の双方にとって大きなメリットを享受できる手法であると考えている。
表 自費ハイブリッドセラミックスインレーと自費コンポジットレジン充塡の患者側評価の相違
〔高橋 登: ザ・クインテッセンス 2008; 27(9): 72.〕
直接法と間接法で同等の予後成績を認める
本邦の一般臨床家が自費にて診療を提供する場合,その治療法に保険診療よりもさらに高い信頼度を求める傾向にあるのは,患者との信頼関係を維持するうえでも必要なことは疑いえない。
欧米ではう蝕治療に対するアプローチが,アマルガム充塡など直接法が第一選択肢であったことから,直接法に対する信頼度がもともと高く,現在ではマテリアルの変遷により直接コンポジットレジン充塡が最も広く適応されている。
一方,本邦においては大学教育において既に直接コンポジットレジン充塡の信頼性が浸透しているが,一般臨床の場ではもともとメタルインレーが多く適応されてきた経緯から,直接コンポジットレジン充塡の予後について懐疑的な考え方も潜在している。
しかし,直接法と間接法(インレー)の予後に関する研究報告は多く,ほとんどの臨床対照研究では,予後に有意差を見出せないでいる【図3】。このことから,双方の治療成績自体に大きな差はなく,「術者がその治療法に精通しているかどうか」という要素が治療の予後を左右すると言えよう。
【図3】直接コンポジットレジン充塡と各種インレー修復における5年間の予後評価。左から直接コンポジットレジン充塡,セラミックスインレー,ハイブリッドセラミックスインレー,セレック。各サンプル間に統計学的有意差はない。直接コンポジットレジン充塡のサクセスレートは91.7%であった。
◆今回は,自費コンポジットレジン充塡について臨床的側面,患者側評価,医院経営的側面から論じた。後編では実際の臨床手法について解説したい。
《DENTAL TRIBUNE 2009年 4月Vol. 5 No.4 P 20より》
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