DT News - Japan - 歯が初期段階の脳細胞に形質転換

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歯が初期段階の脳細胞に形質転換

誘導処理後、明らかなニューロン様を呈したマウス由来の歯髄幹細胞(Photo courtesy of the University of Adelaide)
DT Asia Pacific

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水. 21 5月 2014

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豪・アデレード/英・ロンドン:約10年の研究を経て、アデレード大学幹細胞研究センターはこのほど、歯の幹細胞を使った再生医療の新たな画期的発見について発表した。初期胚発生間に脳内に存在する様々な成長因子にマウスの歯の幹細胞を曝露することにより、情報の伝達・処理を担うニューロンに似た複雑な細胞ネットワークを作製できたという。

  生理学の博士課程を終え、大学の商業化部門を担うアデレード・リサーチ&イノベーションの商業開発マネージャーである主任研究員カイリー・エリス博士によると、その細胞は、ニューロンが導く伝達に必要なイオンチャンネルなどの機能がまだ不十分であるが、脳卒中患者を助ける新たな治療法の開発に大きな一歩を踏み出すことに成功した。同氏は、因子の異なる組成物を使って誘導する方法が、幹細胞からニューロンへの完全な移行をサポートするのに必要かもしれないという。同氏のチームは現在、どのような期間・時間帯で幹細胞が回復に有用に働き、どのように効果をもたらすかといった脳卒中後のtime windowを調査している。

  「これまでの成功裏の結果が継続できれば、今後5年以内に臨床試験まで進めるのではないかと期待している」と同氏はDental Tribune Asia Pacificに語った。大学の学術と医療の共同機関である同センターは、2005年から歯の幹細胞に基づく脳の治療法に取り組んできた。これまでの幹細胞を用いた脳卒中後の治療では、げっ歯類で認知機能と運動能力を改善することも発見されている。Stem Cell Research and Therapy誌に掲載された最近の発見は、ヒトにおける実際の治療のための実験室ベースのモデルを開発するうえでのより広範な研究であった。

  「最終的には、細胞ベースの治療にしばしば付随する拒絶反応が起こらないよう、テーラーメイドの脳治療として患者自身の幹細胞を使いたい。歯髄幹細胞での治療は、脳卒中から何か月あるいは何年も後に提供できる治療の選択肢となりうる」と同氏は語る。

  研究によれば、乳歯や永久歯の歯髄から派生する幹細胞は、これからの再生医療において多大な可能性を持っている。たとえば、血液、骨、神経といった様々な組織に形質転換することに成功している。骨髄やその他から抽出される幹細胞にくらべ、歯髄からはより簡単に集められ、引き起こす倫理的な問題も少ない。

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