Dental Tribune Japan

【オピニオンリーダーに聞く】超高齢社会の中で、歯科医が果たす新たな役割

By Blanc Networks,Inc Japan
June 22, 2018

我が国の歯科医師社会を代表する唯一の総合団体として、1903年11月に設立され、今年で115年を迎える日本歯科医師会。その活動は、乳幼児歯科健診や学校歯科健診、母子保健を通して歯科保健に貢献するほか、「8020運動」でも大きな成果をあげてきました。2016年末現在、日本の歯科医師数10万4,533人のうち、約6万5,000人が加入する同会は、今後、どのような役割を担い、活動を行っていくのでしょうか。そこで堀憲郎会長に、「歯科医療の過去、現在、未来」について、お話を伺いました。

日本歯科医師会

その存在意義と役割

日本歯科医師会定款の第3条に本会の目的として、「都道府県歯科医師会及び郡市区歯科医師会との連携のもと、歯科医学・歯科医療に携わる歯科医師を代表する公益団体として、医道の高揚、国民歯科医療の確立、公衆衛生・歯科保健の啓発、並びに歯科医学の進歩発達を図り、もって国民の健康と福祉を増進すること」とあり、これが本会の存在意義といえるでしょう。

具体的には、歯科医師を代表とする団体として歯科医療政策の提言をすること。そのための歯科界結束に向けてリーダーシップをとる役割もあります。また歯科医師には「個人として診療室で果たす責任」のほかに、「組織の一員として果たす公的な責任」があると私は考えています。

歯科医師の憲法ともいえる歯科医師法第1条には「歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保する」として、「公衆衛生」「公的な責任」が明確に謳われています。歯科医師会は会員が法で求められているこれらの責任を果たすために、学校健診、乳幼児健診等の場を確保し、また生涯研修の仕組みを提供するなどの支援を行う仕組み作りを行ってきました。歯科医師会という組織がなければ、歯科医師に求められている責任を果たせないと理解しており、このことも大きな存在意義と思っています。

「伸び続ける医療費をどうするか」という議論が交わされる中、歯科だけは2002年頃から10年近く歯科医療費を減らし続けるという危機的状態に直面していました。そこから、歯科界は一丸となって「超高齢社会の新しい役割と責任はなにか」について議論を重ねて、「超高齢社会では単に長く生きることを目指すのではなく、むしろ食べる、話す、笑うという生活の基本的な機能を人生の最

後まで全うすることを目標とするべき」という方向性を得て、そこに歯科医療や口腔健康管理の大きく新しい役割を見いだそうとしています。

その理解を得るため、歯科界は「口腔機能管理により誤嚥性肺炎が激減する」、「全身の手術の前後で口腔機能管理を徹底すると、入院日数が少なくなる」といったデータを示し、最近では糖尿病、認知症と口腔の健康の関係についても発信してきました。これらのデータ等をもとに、昨年の骨太の方針にも「口腔の健康は全身の健康にもつながることから、生涯を通じた歯科健診の充実、入院患者や要介護者に対する口腔機能管理の推進など歯科保健医療の充実に取り組む」と明記されるなど、理解と期待が深まっているところです。この期待に応えて、さらにオールデンタルで、健康寿命の延伸に向けて取り組んでいきたいと思います。

歯科医療の広がりと地域包括ケアシステム

この昨年の骨太の方針への記載が典型ですが、歯科界からの発信により、歯科医療や口腔健康管理の重要性が広く知られるようになりました。地域の医療連携の中で、患者さんに長く寄り添っていくことが、本来のかかりつけ歯科医の姿であり「やりがいを感じる」という声が歯科医からも聞こえてきています。

また、「地域包括ケア」「地域医療計画」「地域医療介護総合確保」といった言葉が示すように、国の医療政策は地域重視、地域完結型になってきています。従って先ほどの「超高齢社会の新しい歯科医療の役割」を地域包括ケアシステムの中で具体的に実践することが、求められています。

今、診療報酬改定の中で日歯が示した「かかりつけ歯科医」の定義は、このような視点で、新しい歯科医師像を示しています。即ち「地区の歯科医師会との連携」、「在宅、病院、介護施設等での歯科医療提供」、「チーム医療、退院時カンファレンスなどへの積極的な参画」、「他職種との連携」等を謳っています。

ただし歯科医療機関の約8割は個人経営で体力の弱い診療所であり、在宅診療を行うには外来診療を休診する必要があり、また地域に歯科のある病院が少なく、連携が進まないなど、まだまだ多くの課題を抱えています。

課題は整理されていますので、今後はそれらを克服するために、さまざまな取り組みを行っていきたいと思います。例えば、地域の歯科医師会の機能強化による病診連携の推進や、歯科診療所同士が支え合って在宅診療を行う仕組みをつくるなど、すでに多くの成功事例がありますので、それらを紹介することも必要だと思います。

歯科医療を国民へ周知し、国際的視野で業界を活性化

2年前に私が会長に就任した時に、日歯として取り組む「28課題」を掲げ、タスクチームを立ち上げました。その中に「女性歯科医師活躍検討チーム」があります。女性歯科医師は出産や育児、介護などで一旦離職すると復職が難しいという現状があります。そこで、外部有識者も交えて、女性歯科医師の多様な働き方の支援に関する議論を行っています。例えば、ホームページ上に就職支援サイトを設置したり、ブランクの後の復職に必要な研修の充実や、復職した後にフレキシブルに働ける労働環境などを検討しています。

また、歯科技工士や歯科衛生士などの不足に対しては、毎年、文部科学省や厚生労働省へ職業告知の推進、学生への奨学金や養成校への補助金の充実を要望しています。特に高校の進路担当教師が、歯科技工士や歯科衛生士の仕事を理解していないという問題があります。本会のホームページで、歯科衛生士、歯科技工士の仕事を紹介する動画を配信していますし、また8020運動の30周年に当たる今年、記念事業として、歯科衛生士、歯科技工士の仕事を含む歯科医療のことを国民に広く身近に知っていただく目的で映画の製作にも取り組んでいます。『笑顔の向こうに』というタイトルで来年の2月か3月の公開を予定しています。

本会の国際活動については、「国際戦略検討ボード」というタスクチームを立ち上げています。本会は1969年からFDI(世界歯科連盟)に加盟し、毎年大会には代表団を派遣しています。しかし、活動がこれまで会員にはよく見えていませんでした。その理由は、歯科医個人には直接関係がないことや、専門的な立場での議論が多いこと、さらには日歯としては国内の政策で手一杯で、国際戦略の議論を深めるまでには至っていなかったと思います。

国際戦略検討ボードでは、FDI対応のほか、国のアジア健康構想を視野に入れつつ、アジア諸国との連携を議論しています。現在、ミャンマーとベトナムに対しては書籍の提供という形で協議を進めており、韓国とは5月に包括的な協力関係構築に向けて覚書を締結する予定です。

一昨年、ポーランド、昨年スペインと自分自身がFDIに参画してみて、国際社会の日本に対する期待が想像以上に大きいことを実感しています。また、国際社会の一員として日本の責任を議論することが、国内政策をより磨き上げることにつながると認識しています。

国際対応を含め、チャレンジングな課題に取り組み、歯科界全体を活性化し、元気が出る、誇りをもって仕事のできる歯科界にしていきたいと考えています。

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