スウェーデン・ヨーテボリ:臨床現場では、バイオフィルムはしばしばカテーテルや医療用移植物、医療用人工装具などの表面を覆い、生命を脅かす感染症や移植の失敗を引き起こす。ヨーテボリ大学の研究チームが、危険にさらされている表面をある種の蛋白質活性化因子で覆うと、それにより、危険な細菌の増殖を防いでバイオフィルム形成を阻害するという新しい技術を発明した。
有病率と抗生物質耐性が高いために、医療機器に内在する感染症バイオフィルムは医学的に大きな挑戦である。ヨーテボリ大学健康科学部サルグレンスカ・アカデミーの研究者らは、血栓の機能停止に関与する蛋白質である組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)が、どのようにStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)バイオフィルム形成に影響するか調査した。
研究の初期では、同大学リウマチ・炎症研究准教授のTao Jinが主導する同チームが、バイオフィルムの成長を促す極小の血栓を作ろうと、黄色ブドウ球菌がヒトの血液凝固システムを乗っ取ることを発見した。
「ヒトの体に対して、こうした血栓を溶解するよう仕向けられれば、バイオフィルムの成長を予防できると我々は仮説をたてた」と、Jin研究室のポスドク研究員であるJakub Kwiecinskiは説明している。
その結果、tPAコーティングが種々の黄色ブドウ球菌株によるバイオフィル形成を効果的に抑制し、初期の粘着性や後期のバイオマス蓄積の両方を予防した。さらに、バイオフィルム感染症の抗生物質に対する感受性を、そのコーティングが増大させることも明らかとなった。
医療機器に内在する細菌バイオフィルム感染症を予防するためのtPAのような線維素溶解コーティングは新しい概念であり、したがって、院内感染症やその関連死を大きく減少させる要因になるのではないか、と研究者らは結んでいる。
バイオフィルムや機器関連感染症は、世界中で何百万もの人々を苦しめている。欧州疾病予防管理センターによると、毎年4百万人以上が医療関連の感染症に罹患しており、そのうちの3万7,000例が致命的であるという。これら感染症の65%が、特に医療機器に関与する細菌や菌類のバイオフィルム形成能力に関連している。「現代医学における人工装具使用の増加が、この数字をもっぱら拡大させている」とKwiecinskiは話す。
“Tissue plasminogen activator coating on surface of implants reduces Staphylococcus aureus biofilm formation(移植表面へのtPAコーティングが黄色ブドウ球菌バイオフィルム形成を減らす)”というタイトルのこの研究は10月30日、Applied and Environmental Microbiology誌オンライン版に掲載された。
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