DT News - Japan - 歯科医は臨床データに裏付けられた 科学者であるべき

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歯科医は臨床データに裏付けられた 科学者であるべき

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日. 29 10月 2017

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墨 尚(すみ・たかし)1997年、愛知学院大学歯学部卒業。その後、同大学非常勤助教、I.O.R.補綴統括講師、O.S.I. Study Club名古屋支部副支部長を務める。2013年、フロリダのタンパで開催されたAcademy of Osseointegration Annual Meetingにおいて、Best Presentation Awardを受賞。現在、Academy of Osseointegration Global Program Developmentに所属し、Committee Member とGlobal Ambassadorを兼任。

自問自答からインプラントを学び直す
私は1999年からインプラント治療を行っていますが、当時のインプラントは「うまい」か「へた」ですべてが流れていました。歯科雑誌ではうまい治療ケースや、うまい歯科医がいろいろ紹介され、若いときはそれを見て「私もそうなりたい」と思ったものです。
歯科医院を開業し、ある程度の経験も積み、インプラント治療への自信もついてきましたが、一方で「本当にこのままでいいのだろうか」という思いもありました。そこで、一度、しっかりとインプラントの基礎から学び直そうと、スウェーデンでの1週間の研修に参加しました。
毎日、朝8時から夜の6時まで、びっしりと行われる講義の中で、何よりも私が教え込まれたのは、「インプラント治療は科学であり、医療には再現性が必要」ということでした。
その当時、日本で頑張ってやっていたことは経験則に過ぎず、どうしてそうなるのかという理由に乏しかった気がします。海外の先生たちからよく言われるのは、「その治療は、別の患者に同じようにできるのか」ということです。誰が行っても同じ結果になる、つまり再現性があるのが医療であり、それは科学なのです。
しかも実際にスウェーデンの臨床現場を見ることで、「こんな小さなことまでデータをとっているんだ」と感心しましたし、その臨床データを基にエビデンスを導き、自分の治療に生かしているのを見て、かなりショックを受けました。それ以来、自分が治療した臨床データは必ずとるようにしています。
また、スウェーデンの研修で一緒だった東京の竹下賢仁先生が主宰するI.O.R.(口腔内再構築研修会)に、補綴コース統括講師として参加していますが、ここで最も大切にしていることは、「歯科医師は科学者」という言葉です。つまり歯科医師は、臨床データから導き出したエビデンスに基づいた治療を行う、科学者であるべきだと思うのです。
そして日本の歯科医師たちも、再現性がある治療を行うようになれば、日本が世界のトップに立ち、海外から日本に学びに来るようになるでしょう。

 

デジタル技術はツール。頼り過ぎてはいけない
歯科の世界にもデジタル化の波が押し寄せています。ただし、この点で海外と日本に大きな違いがあります。それは日本の先生たちは、デジタル技術を使うと「うまくなる」と思っていることです。しかし、海外の先生たちは、デジタル技術は単に自分たちの仕事を手助けするものであり、誰が治療しても同じ結果を出す道具であると割り切っています。
あるいは口腔内スキャナーの場合、何百万円も投資したら日本の先生たちには、「どうして何百万も出して平均点の治療なのか」という思いがあり、「うまくならないと困る」と考えがちです。
これからデジタル化はますます歯科医療にも浸透していきますが、ただその流れに意味も考えずに真っ向から乗ってしまうことは危険です。しかし、ここでもデジタルならではの再現性に注目すべきではないでしょうか。治療データの一元化と保存、これは口腔内を再建するうえで、非常に重要なファクターになっていく気がします。
もう一つ海外と日本の違いで感じるのは、歯科衛生士の自立性です。例えば、スウェーデンの一般の歯科医院は、メンテナンスに2時間ぐらいかけ、歯1本1本を本気でメンテナンスしています。それを行うのは歯科医ではなく歯科衛生士であり、裁量も大きく、歯科医と意見を交わせる関係性ができています。
自院での取り組みにもなっていますが、これからは日本でも、歯科衛生士の裁量を認め、歯科衛生士が意見を言える環境をつくっていくことが必要であり、大切だと思っています。

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