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水を使わない口腔ケア。お口の汚れを軟化させてからめとる!!

対象者の口腔内。患者は誤嚥性肺炎を繰り返し発症した、某病院の入院患者である。 入院中は加療により、口からは何も食べていない状態であった。口腔環境は、口腔乾燥が中等度であり、軟口蓋には乾燥痰の付着がみられ、口腔ケア時には開口拒否がみられた

月. 1 8月 2016

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口腔ケアによる誤嚥性肺炎 口腔ケアは、肺炎の予防に有効であることが知られています。これは、特別養護老人ホームにおける口腔ケアの介入研究によってあきらかにされた結果を根拠にしています。最近では、施設や病院において口腔ケアの意識があきらかに高まり、入所者、入院患者の口腔内は以前とは見違えるほどに改善しました。

一方、最近の介護保険施設などでは、以前よりも誤嚥性肺炎のリスクが高い、嚥下機能の低下や低栄養を示す患者が多く入所しているといえます。このような状況のなかで、口腔ケア中に生じた口腔内細菌の誤嚥が肺炎を引き起こしているのではないかという危惧も広がっています。口腔機能の低下によって舌口蓋閉鎖が困難となり、口腔ケア水や唾液などの口腔内保持ができずに咽頭流入させてしまい、さらに誤嚥してしまうのであれば、そのリスクは高まることになります。
そこで、口腔ケアを行う場合には、歯に付着したバイオフィルムを口腔内に落とさないように、口腔ケア中に唾液を誤嚥させないように対処することが求められます。

「お口を洗うジェル」の効果
最近発売された口腔ケア用ジェル「お口を洗うジェル」(図1:日本歯科薬品)は、口腔ケアの際の前述のリスクを最小限にすることを目的として利用されています。
歯に対する物理的な刷掃行為は、歯に付着するバイオフィルムを剝がす行為です。これにより、多くの細菌は歯から剝離して口腔内に落下し、唾液中に溶け込む可能性があります。そこで、本ジェルをあらかじめ歯に塗布し、そのうえで刷掃すればバイオフィルムの口腔内への飛散を抑えることができます。刷掃後にジェルごと口腔外に除去することができれば、安全に口腔ケアができることになります。
そこで、健康成人14名に協力してもらい、ジェルの使用によって細菌が口腔内に落ち込むのを防ぐことができるか、その効果について実験を行いました。被験者には昼食後に口腔ケアを行わないように指示し、昼食後6時間後に、「お口を洗うジェル」(約0.8g)を歯に塗布後に口腔ケアを行った場合と、ジェルを塗布せずにそのまま口腔ケアを行った場合の唾液中の細菌数を細菌測定装置(細菌カウンタⓇ:図2、パナソニックヘルスケア)で測定しました。口腔ケアは2分間行い、それぞれ2試行は各口腔内の特徴に合わせて同一方法としました。
ジェルを用いずに口腔ケアを行った場合(図3)、唾液中の細菌数が10倍を超えたケースは5ケースあり、平均で唾液中の細菌数は9.9倍に増加しました。一方で、ジェルを用いた場合(図4)、10倍を超えたケースは2ケースのみで、平均で6.7倍の増加にとどまりました。口腔ケアによる唾液中の細菌数の増加があきらかになったことに加え、ジェルを用いた口腔ケアは、その増加を有意に抑えることがわかりました。口腔ケアを行う際には歯ブラシのみでブラッシングを行うよりも、ジェルを併用することでブラッシング時の歯ブラシの毛先によって起こる細菌の拡散を防げることが示唆されました。
図5〜7に実際の症例を示します。

最後に
口腔ケア中や口腔ケア後に口腔内細菌を誤嚥をさせないためには、口腔ケア中の口腔内吸引、咽頭内吸引が望まれます。
一方で、すべてのケースで吸引処置ができるとは限りません。 “口腔ケア関連性誤嚥性肺炎”といわれないためにも、ぜひ「お口を洗うジェル」をご活用いただきたいと思います。
 

有友たかね(DH) 田中祐子(DH) 菊谷武
日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック

デンタルダイヤモンド2016年6月号「臨床に役立つすぐれモノ」

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