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虫歯が多いと頭頸部がんの発症リスクが7割低下-米・症例対照研究

金. 20 9月 2013

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米ニューヨーク大学バッファロー校口腔生物学のMine Tezal氏らは,米国内のがんセンターで頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)と診断された約400例についての症例対照研究において,う蝕(虫歯)が多いとHNSCCの発症リスクが68%低下することを明らかにした(JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 2013年9月12日オンライン版)。 

クラウン,歯内療法の箇所が多くてもリスクが低下

 症例群は,1999~2007年に米国内のがんセンターで新たにHNSCCと診断された399例(平均年齢58.62歳,男性70.4%,女性29.6%),対照群はHNSCCと診断されなかった221例(同54.35歳,39.4%,60.6%)。いずれの群もがん,異形成,免疫不全症の既往例,21歳未満は除外された。

 その結果,症例群における扁平上皮がん(SCC)は146例(36%),中咽頭扁平上皮がんは151例(37.8%),喉頭上皮がんは102例(25.6%)に認められた。

 口腔内の状態を両群で比較したところ,う蝕数は対照群の2.04本に対し症例群は1.58本と有意に少なく(P =0.03),クラウン数(対照群2.10本vs. 症例群1.27本,P=0.004),歯内療法を受けた数(同1.01本vs. 0.56本,P=0.01),充填数(同6.17本vs. 5.39本,P=0.04)についても同様であった。

 欠損歯数(同8.50本vs. 13.71本,P<0.001)および歯槽骨喪失(2.44 mm vs. 4.03 mm,P<0.001)はコントロール群に比べて症例群で有意に多く,DMFT指数※は両群間で差はなかった(同15.39 vs. 16.40,P=0.09)。

 各口腔内環境を最高三分位と最低三分位に分け,診断時の年齢,性,結婚の有無,喫煙状況,アルコール摂取などで補正し,HNSCC発症のオッズ比(aOR)を算出。

 最低三分位に対する最高三分位群のaORは,う蝕が0.32(95%CI 0.19~0.55,P for trend<0.001),クラウンが0.46(同0.26~0.84,P=0.03),歯内療法は0.55(同0.30~1.01,P=0.15)と,いずれも歯科治療の箇所が多いほどHNSCC発症リスクは低下していた。

 一方,充填数(同0.30~1.01,P=0.15),DMFT指数(同0.30~1.01,P=0.15),欠損歯数(同0.30~1.01,P=0.15)については最高および最低三分位で差はなかった。

食品別の検討が必要

 以上から,HNSCC発症リスクとう蝕数は逆相関の関係にあるとTezal氏ら。

 なお,う蝕は口腔内細菌が糖質からつくられた酸によって歯質が脱灰されて生じるが,糖質や酸を含む果物や野菜の摂取はHNSCCの発症リスクと逆相関することが確認されている。対照群での果物の摂取が高いう蝕数を招いた一方,HNSCCの発症リスクを低下させた可能性があると同氏は指摘。今後,摂取食品別にう蝕とHNSCC発症リスクの関係を調べる必要があるとしている。 

 

※ 集団における永久歯列のう蝕の罹患状態を把握するために用いられる指標。Decayed(保存可能な未処置歯)・Missing because of caries(う蝕が原因の抜去歯)・Filled(う蝕が原因で修復した歯)を1歯ごとに評価したもの。被験者のDMF歯数の合計/被験者数で算出

 

医師のための専門情報サイト MT-pro 2013年9月19日 掲載分より転載

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