Vol.1下歯槽神経
-非可逆的損傷を与えてはいけない-
非可逆的損傷を与えてはいけないインプラント治療で大きな問題となりえるのが手術に関係するものであり,それは,非可逆的(取り返しのつかない)損傷を与えてしまうからである。なかでも緊急を要するものが出血であり,太さ2~3mm以上であれば早急に止血処置(血管結紮など)をしなければいけない。次に問題になるのが神経である。血管は切断したとしても止血ができれば問題ないが,神経は,切断したことで半永久的に障害(神経麻痺)が残る。
非可逆的損傷を起こした場合,害を被るのは患者である。義歯では咀嚼機能の回復が十分に行えない。この機能障害を回復させるために,十分に確立された最良の治療法としてインプラント治療があるが,そこで被害を与えてしまっては「医療」ではなくなる。歯科医師として,医療人としてこのようなことを起こさないよう日夜努力すべきである。本シリーズは,インプラント治療を行うに当たりもう一度確認していただきたい局所解剖を取り上げる。
下歯槽神経にまつわるトラブル,訴訟は最も多く,埋伏智歯の抜歯術,インプラント体の埋入手術,外科的矯正手術などに関連して生じる。下歯槽神経は,三叉神経の第三枝として卵円孔を通じて脳頭蓋底より下り,下顎孔より下顎骨内に入る。その後,下顎骨内を走行しオトガイ孔より外に出て歯槽部粘膜,下口唇部口腔粘膜および皮膚に分布する。下顎孔が下顎枝舌側にあり,オトガイ孔は下顎骨体部頬側にあることで,下歯槽神経は舌側から頬側へと横断している。その走行パターンは上条雍彦氏の『口腔解剖学』(アナトーム社)に多くの図譜とともに紹介されている。今回はその1つを示すので理解を深めて欲しい。
下歯槽神経の走行パターン
図は,下顎左側の小臼歯部から関節突起部までを上から見たものである。最も頻度の高い走行パターンは,①,②,すなわち,オトガイ孔に達するまでにほとんど舌側部を走行し,第二小臼歯部で頬側へ急激に横断するものと,第一大臼歯部あたりから緩やかに頬側へ横断するものであり,出現率は合わせて51.7%である。次いで,③~⑥のほぼ下顎骨体の中央を走行するパターンで,合計すると28.3%である。⑦,⑧のような,下顎孔から入って中央部あるいは頬側に進み第二大臼歯部で舌側に移り,第二小臼歯部からオトガイ孔へ向かうパターンは,合わせて20%となる。
下顎骨は,歯が脱落することで歯槽骨部が吸収する。特に歯槽骨部の頬側の骨は吸収が早い。したがって,下顎第一,第二大臼歯部の舌側皮質骨内面に沿ってインプラント体が埋入されることが多く,①,②,⑦,⑧,合計71.7%の患者においては下歯槽神経損傷リスクが高い。つまり,ほとんどの患者において注意が必要ということである。
【図】下歯槽神経の走行パターンと頻度
《DENTAL TRIBUNE 2009年7月Vol. 5 No. 7 P6より》
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