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MIコンセプトに基づいたポーセレンラミネートベニア修復 前編

火. 23 8月 2016

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近年、ダイレクトコンポジットレジン修復の材料や修復技術の進歩に伴い、ポーセレンラミネートベニアの適応症も変わりつつある。 図1に、歯間離開を主訴に来院した患者の口腔内を示す。筆者は、現在ではコンポジットレジン修復による改善を第一の選択肢に挙げるが、以前は図2 のようにポーセレンコンタクトベニア(パーシャルベニア)を作製し、レジンセメントにて口腔内に装着していた(図3)。

図4に、4年経過後の同部位を示す。トラブルもなく、経過は良好である。現在ではコンポジットレジンのフィラー技術の進歩により、その研磨性が高くなってはいるものの、図5の電子顕微鏡写真に示すように、コンポジットレジンとポーセレンの基本的な構造は変化していない。したがって、ポーセレンの高い生体親和性を活かして、歯間乳頭部の歯肉形態のコントロールが必要な場合や、歯間離開スペースが広い場合には、歯質の切削を伴わないポーセレンコンタクトベニアによる改善を選択している。
一方、図6のように、同時に多数歯の形態や色調を改善する場合、最小限の歯質の切削で修復可能な(図7)ポーセレンラミネートベニアによる改善はMIコンセプトの観点から非常に有効である(図8)。最小限の歯質の切削は、エナメル質に対する高い接着力が期待できるため、予後も良好となる。
図9に、7年後の口腔内を示す。歯肉退縮は認められたものの、ポーセレンラミネートベニアの脱落、破折を伴うことなく、予後は良好である。

ポーセレンラミネートベニアの形成
ポーセレンラミネートベニアの形成法についてはさまざまな考え方や手技があり、正解はひとつではないと思われる。本項では、筆者が実践している形成法について紹介する。
図10に、審美性の改善を主訴に来院した矯正治療終了後の患者の口腔内を示す。診査の結果、小臼歯および大臼歯のクラウンやインレーはポーセレンによるオールセラミック修復、その他の小臼歯および前歯はポーセレンラミネートベニアによる修復によって主訴を改善することとした。
図11に示すように、ポーセレンラミネートベニアの形成は、基本的にエナメル質内にとどめる。形成量は歯頸部0.3㎜、歯冠中央部0.6㎜、切端部0.9㎜が目安となるが、筆者はあらかじめモックアップした模型よりシリコーンインデックスを作製し、それを参考にポーセレンラミネートベニアの厚みが均一になるように形成している(図12)。
また、着脱方向が唇面側になるため、3面形成を基本とし、その後、それらの面を移行的に仕上げる。さらに、歯肉側のフィニッシュラインは歯肉等縁とし、切端側のフィニッシュラインは図13に示すように舌側の歯質をオーバーラップしないようにする。隣接面は、接触点を残存させ、バーを歯頸側から切端側へ引き抜くように形成する(図14)。図15に示すように、下顎も同様にポーセレンラミネートベニアの形成を行った。

ポーセレンラミネートベニアの装着
ポーセレンラミネートベニアの装着は、レジンセメントを用いる。ポーセレンラミネートベニアのシェルの厚みは薄いため、前処理として光照射を必要とするボンディング材を用いるもの、あるいは光照射を必要としないプライマーを用いるもののどちらも使用可能である。さらにレジンセメントも光照射のみで硬化するもの、あるいはデュアルキュアタイプのもののどちらでも使用可能である。筆者は、ポーセレンラミネートベニア装着時の操作時間に余裕をもたせるために、前処理法とレジンセメントを、症例に応じて選択している。
まず初めに、トライインペースト(試適用セメント)、あるいは水のみにて色調および適合を確認後、ポーセレンラミネートベニアシェルの内面を正リン酸にて清掃する(図16)。そして水洗、乾燥後、シェル内面にポーセレンプライマーを塗布する(図17)。
一方、歯面の清掃には、フッ化物を含有していないクリーニングペーストを用いる(図18)。被着面のエナメル質部には、正リン酸でエッチング処理を行う(図19)。水洗、乾燥後、プライマーを塗布する(図20)。
筆者は、テクニカルエラーを最小限にとどめるため、1歯ずつ接着前処理し、レジンセメントにてポーセレンラミネートベニアを装着している。余剰セメント除去後、十分に光照射し、レジンセメントをできるだけ重合させるのがポイントとなる。そして装着後に咬合チェックおよび調整を行う(図21)。
なお、本項で紹介するポーセレンラミネートベニアの製作は、東海歯科医療専門学校の長谷川彰人氏によるものであることを申し添える。

「修復と補綴のLongevity」(デンタルダイヤモンド社)
ぱんだ歯科 須崎 明

 

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