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―5-D Japan 10周年記念座談会― 専門分野の異なる5人が集まり「5-D Japan」を結成し、インターディシプリナリーのアドバンスセミナーをスタートさせたのが2008年。今年で10周年を迎えるのを記念し、来年3月に「世界の潮流と5-D Japanコンセンサス」と題し、海外から5人の各分野の第一人者を招き、記念総会が開催されます。 そこで、5-D Japanのファウンダーの方々に、セミナー設立までの経緯やその思い、この10年における各分野の進化、さらに第10回記念大会の見どころについて語っていただきました。
セミナー設立の経緯と各ファウンダーの思い
Dental Tribune Japan:今、5-D Japanのアドバンスコースを受講するのに、3年の予約待ちという大変人気の高いセミナーですが、まずコース設立までの経緯を教えてください。
船登 我々5人は2008年の設立以前から、一緒に講演をしたり、お互いの著書を読んだりするなど、それぞれの存在を知っていました。そして2006、7年ぐらいから、食事をしたり、勉強会をしたりする機会が増えてきました。私と石川先生、北島先生はペリオとインプラントが専門で、福西先生はエンドと移植、南先生はマイクロを用いた補綴治療と歯周形成外科が専門です。そこで「我々の専門性をトータルに学べるコースをぜひ一緒にやってみませんか」と私から声をかけ、皆さんの同意を得てスタートしました。セミナーを始めるにあたっては、2008年に毎月、大阪で5人が集まり、どういうコース内容にしていくかを約1年間話し合いました。2009年1月のキックオフミーティングの時には、700名近いドクターに集まっていただきました。
先生方がベーシックからではなく、あえてアドバンスから始めようとされたのは、どのような理由からですか。
船登 ワンランク上の治療や考え方を知っていただきたい、という理由が大きかったですね。そこで5人がイーブンの時間をもらい、それぞれの分野の強みをフルに生かしたアドバンスコースをということになりました。ただ、最初からスムーズだったわけではなく、5人のコンセンサスや共通の考え方を持つまでには、侃々諤々の議論をしていましたね。
インターディシプリナリーのセミナーを、日本でも目指そうということだったのですね。スタディーグループの派閥を超えてという点では、日本では先駆けという印象ですが、その他の先生方の思いはいかがですか。
石川 この5人でセミナーを始めて、効果はすぐに出ました。例えば私のところで移植が必要な小学生の女の子に対し、福西先生が手術をしたり、その手術に南先生がアイデアをくれたりしました。5人がバラバラで行うよりも、一緒にやり始めたことで、我々の臨床の幅が非常に広がったという実感があります。
南 その当時、インプラントで日本のクリニシャンのコースを受けるのであれば、船登先生、石川先生、北島先生の3人のコースであったことは間違いありません。私としては5人になることで、自分の臨床とは違う視点を得ることができると、非常に楽しみに始めました。
福西 最初は、私は一人ですべての分野をカバーしたいと考え、一人で治療計画からゴールまでいこうとしていました。しかし、10年間自分のコースをやってきて、限界を感じました。つまりすべての分野を常にアップデートしていくのは、無理だと分かったのです。
これからもうワンランク上にいこうと思ったら、それぞれの道のスペシャリストと勉強していかなければならないと思い、この仲間に入りました。
北島 この10年を振り返ってみると、私自身の診療が随分5人の影響を受けて治療の考え方や治療技術が変わってきたと思います。また一方で技術革新が起こり、CTやマイクロが入ってきたり、海外のいろいろな先生の影響も受けたりすることで、講義の内容も、当初の1、2回目と比べるとがらりと変わってきています。少しずつ変わってきたのですが、気がついてみたらこの10年というのは、積み重ねてきたことで大きな変化があったと感じています。ですから、5人が集まって、5-D Japanをスタートして、本当によかったと思っています。
5-D Japan コースの特徴と、10年間の進化
お互いに影響し合い、教える内容もどんどん変化してきたということでしたが、アドバンスコースの特徴を教えていただけますか。
船登 我々のセミナーを代表するフレーズがあります。それは、石川先生が提唱したのですが、①患者さんの希望に応える、②機能的・審美的な歯列の回復を目指す、③天然歯を可及的に保存する、④歯髄を可及的に温存する、⑤歯質をできるだけ温存する、という5つです。いかにMIをしながら、最大の効果をそれぞれの分野で出していこうかと。例えばエンド、修復、ペリオの立場からどうするのか。どうしようもない時はインプラントを必要最小限に持ち込んでいく。このように今のキーワードを入れながら、各自の話を進めていくというのがアドバンスの流れです。
ではそれぞれのご担当のコースで、この10年で特に変化したことがあれば教えてください。
南 私の担当の補綴では、従来のクラウンブリッジ修復から、MIが入りメインストリームが変わってきています。それからもう一つは、これはすべての分野でいえることですが、デジタルの波がかなりきています。例えばCAD/CAMの進化と、それに伴い接着技術とマテリアルの変化が補綴のメインストリームに入ってきて、注目しています。これらの進化や変化により、診療効率も良くなり、精度も高いため、患者さんへのプレゼンテーションも素早く、説得力が出てきましたね。
福西 エンドはCBCTとマイクロスコープ、そしてNi-Tiファイルなどの器具、いわゆる三種の神器が大きく世界を変えました。この3つは10年前とは比較にならないほど精度が上がってきました。画像でもデンタルX線写真とCBCTでは情報量が格段に違い、これまで見落としていたものが拡大することにより、見えてきます。
本当に手に取るように見えるため、エンドの世界にパラダイムシフトが起こりました。だから「マイクロスコープがなければエンドはするな。目をつぶって的を射るような練習はするな」と言っています。逆にこれからの人たちは、これらの三種の神器がなければエンドの成功率は上がりません。
石川 インプラントでは、この10年間で一時的にすごくバッシングされた時がありました。それは経済的にも潤うので、一部の歯科医師にとってはインプラントを入れることが目的のようになり、いろいろな問題が起きていました。ただ、今では経営をインプラントに頼らずに、エンドの質や修復など、やるべきことをやって、それで対価を得ようというような動きが、若いドクターに生まれています。
我々が治療するにあたり、初診から最後までの治療のプロセスは、どういう手順を踏み、患者さんにもできるだけ苦労をかけずに効率的にやっていくかという考えで行ってきました。そのプロセスがクローズアップされ、できるだけ早く侵襲を抑えて、治療を終了することが優先されることもあります。逆に、時間がかかるステップを踏んででも、治療結果の完成度を高めることが目標とされることもあり、患者さんごとに何が求められるかを評価し、対応するようになってきていると思います。
北島 私の担当は歯周治療ですが、先ほど船登先生が紹介していた我々の命題、歯を保存するということにフォーカスして、取り組んできました。そして今、私たちのグループの中でそれが浸透してきているし、周囲の先生方にも受け入れられてきて、「歯を残そう」という動きが出てきているのではないかと思います。
技術的には歯周組織再生療法が、治療計画の中に入ってきて、以前行われていたような切除療法というのは、我々の臨床の中であまり行われなくなってきています。MIがペリオの中でも、一つのキーワードになっていると思います。
私がコースの中で教えている外科は、やればやるほど、そこに至るまでの基本治療がより重視されてきたように感じています。歯周基本治療だけでも治ってしまうことがたくさんあり、本当に外科的治療をすべきところが限局されてきます。そこに対して、天然歯や天然歯質を保存する再生的なアプローチを取り入れるようになってきましたね。
海外から第一人者を招き、10周年記念総会を開催
10周年記念総会では、海外から各分野の5人の第一人者をお招きし、ファウンダーの先生方との共演を企画されているそうですね。それではお一人ずつ、それぞれの講師の紹介をお願いします。
船登 アマト先生は、私たちが使っているインプラントメーカーのインストラクターでもあり、旧知の仲です。彼の講演の見どころは、抜歯即時埋入に対しての考察です。
石川 グルンダー先生は、審美インプラント分野のパイオニアであり権威の一人です。我々の目標でもあります。骨、軟組織のマネジメントに関する長期の経験に基づいた彼の講演には大きな説得力があります。
北島 コルテリーニ先生は、本当にたくさんの文献を出されていますし、豊富な文献からの情報に基づいて再生療法を整理し、初心者にも分かりやすく、また最新の情報も解説していただけると思います。おそらく日本では初講演ではないでしょうか。彼の講演を日本で聞くことができる稀少な機会をぜひ活かしてほしいと思います。
南 ヴァイラーティ先生は著名な補綴学教室でのご経験があり、それを基にお話ししていただこうと思います。彼女はペンシルバニア大学の補綴科、それからジュネーブ大学のベルサー先生の指導の下でずっとやられてきました。単に歯をぐるっと削るのではなく、接着歯学を多用しています。世界の潮流ということを考えた時、やはり皆さんに彼女の講演を聞いていただきたいと思いました。
福西 リクッチ先生は、論文数がとても多く、引用文献にもよく名前が出てくるので、ぜひ彼に講演をお願いしたいと思っていました。そして彼の功績は、病理と臨床を融合させたことにあります。今までの組織学や病理学の多くがアニマルスタディーであるのに対し、人の歯の切片を使っていることに大きな意義があります。そのため細菌がどこまで入って、その結果、炎症がどのように波及しているのかが説明できます。歯髄のバイタルパルプセラピーという分野で、完全に決着をつけたのがリクッチ先生です。
船登 総会の見どころは、我々5人と海外の講師の先生5人で、一人ずつセッションをすることです。ご講演されていない先生には、別の会場で「なぜ歯医者になったのか」「なぜこの分野に興味を持ったのか」などのほか、その先生が考える「その分野の将来像」について語っていただこうと思います。講演とセッションの2本立てで、面白い総会になるのではないかと考えています。
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