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歯が残ることで治療ニーズは増大する
歯周病とインプラント周囲炎が健康に及ぼす影響に関する研究は、これまで数多く行われてきた。だが、それらが社会や経済に及ぼす影響についてはこれまでほとんど取り上げられることはなかった。しかしながら、世界的に高齢化が進む中、これらの疾患の治療に対する社会経済的な負担は見逃せないものとなりつつある。今回、EuroPerio9では、この問題にフォーカスを当てたシンポジウムがいち早く開催された。
6月21日(木)に開かれた「歯周病とインプラント周囲炎に関する世界的な疾病負荷」には多くの聴衆が参加した。まずは司会のDr. Ola Norderydがトピックの概要を紹介し、今後、これらの疾患による真の影響を検討することの重要性を指摘した。
続いてThomas Kocher教授が登壇。口腔衛生の重要性が広く認識されることが、歯周病罹病率の最終的な低下につながるかについての発表を行った。同教授の結論は、先進国では全体としてう蝕の患者が減少し、歯周病罹患率が低下しているように見えるが、高齢者の増加と1人あたりの平均歯数の増加により、歯周治療への需要が高まる可能性があるという、パラドックスが生じるというものであった。一部の国では、体系的な予防対策を行い、口腔衛生に劇的に改善が見られたが、歯が残ることで、治療の需要は大幅に増える可能性があるとKocher教授は述べた。
「一般的な疾患」となったインプラント周囲炎
3人目は、スウェーデン・イエテボリ大学の歯周病専門医Dr. Jan Derksで、インプラント周囲炎の増加とその背後にある要因について解説、同氏が実施した調査結果を合わせて公表した。本調査は、この種の調査としては最大規模のものである。Dr. Derksは、インプラント周囲炎は一般的な疾患とみなすべきであり、患者とインプラントに関連するいくつかの要因が、中等度以上のインプラント周囲炎を引き起こすリスクを高めると指摘した。
歯周病リスク60歳以上への啓発が必要
歯周病は、世界中で約7億4,300万人が罹患し、世界で6番目に多い疾患となり、年間540億ドルの損失をもたらすとみられている。歯周病の有病率は年齢とともに上昇するため、高齢化の進行で世界的な疾病負荷が増加する可能性がある。
EFP(European Federation of Periodontology)はこの問題に迅速に対応し、2017年の『Journal of Clinical Periodontology』でEuroPerio9科学委員長であるSøren Jepsen教授、Maurizio Tonetti教授、Lijian Jin教授、Dr.Joan Otomo-Corgelが歯周病の疾病負荷に対するグローバルな対応を呼びかけた。今年の総会では、EFPの現会長であるAnton Sculean教授が、歯周病のリスクに対する60歳以上の認識を高めていくための働きかけが必要であることを発表した。
インプラント周囲炎対策に歯周治療が必須
歯科治療でインプラントを選択する患者が増えているため、術前、術後を問わず、インプラント周囲炎への対処が必要となる。インプラント周囲の粘膜で起きるインプラント周囲炎は、インプラント周囲の組織の炎症性病変であり、歯周病の存在で引き起こされることが少なくない。治療せずに放置した場合、インプラントのオッセオインテグレーションが低下し、最終的にインプラント治療が失敗する可能性がある。
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