DT News - Japan - 食道がんの予後に関係する口腔細菌

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食道がんの予後に関係する口腔細菌

日本の研究者らは口腔細菌のフソバクテリウム・ヌクレアタムが食道がんの発症に関係する可能性を示した。(写真:bogdanhoda/Shutterstock)
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水. 28 12月 2016

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日本、熊本:これまでの研究で、何種類かの口腔細菌が結腸がん、膵臓がん、食道がんなどのがん発症の一因となることがわかっている。日本の研究者らによる新たな研究では、口腔内によくみられる細菌のフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)が食道がんの発症に関係する可能性が示されている。

近年、歯周病を引き起こすことでも知られるフソバクテリウム・ヌクレアタム(F. nucleatum)が、結腸がんの組織から高頻度に検出され、大腸がんの発症に影響を与える可能性があると報告された。このため熊本大学の研究者らは、口腔が食道のすぐ近くにあることから、フソバクテリウム・ヌクレアタムが食道がんの誘発にも重要な役割を果たしているのではないかと考えた。

熊本大学医学部附属病院で食道がんの切除手術を受けた患者325人のがん組織のDNAを、リアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)解析を用いて評価したところ、325人中74人(およそ23%)の、がん組織中にフソバクテリウム・ヌクレアタムが存在することが判明した。
次に食道がん組織のフソバクテリウム・ヌクレアタム検査で陽性だった患者と陰性だった患者の手術後の生存期間を比較した。その結果、がん組織中にフソバクテリウム・ヌクレアタムが存在するグループの生存期間が有意に短いことを見いだされ、さらにフソバクテリウム・ヌクレアタムが存在する患者では、特定ケモカイン(白血球の輸送に関係しているタンパク質)の遺伝子数が増加していた。これは、より攻撃的な腫瘍挙動に繋がるものである。

「この研究で、口腔細菌のフソバクテリウム・ヌクレアタムがケモカインを介して食道がんの発症と進行に関与している可能性が示されました」と、筆頭研究者である熊本大学大学院 生命科学研究部 消化器外科学の馬場秀夫教授は述べ、「注意すべきは、フソバクテリウム・ヌクレアタム自体が食道がんを引き起こすのかどうかについて、まだわかっていないということです」と付け加えた。一方で馬場教授らは、フソバクテリウム・ヌクレアタムが食道がんの潜在的な予後バイオマーカーとなる可能性を示している。「今後の研究で、食道がんの発症におけるフソバクテリウム・ヌクレアタムの役割がさらに詳細に解明されれば、この種のがんの治療を向上させる新薬を開発できるはずです」と結論づけている。

この研究は「食道がん組織中のヒト微生物叢フソバクテリウム・ヌクレアタムは予後に関連する(Human Microbiome Fusobacterium Nucleatum in Esophageal Cancer Tissue Is Associated with Prognosis)」と題され、11月15日にClinical Cancer Research誌にオンラインで掲載された。

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