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親の唾液で児のアレルギー予防効果,喘息9割・皮膚炎6割減少

親の口腔内洗浄によるおしゃぶりを使用していた児のアレルギー疾患発症リスク,減少傾向が見られた (Photo: Yuri Arcurs/Shutterstock)
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火. 14 5月 2013

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スウェーデン・出生コホート対象研究:親の唾液が児のアレルギー疾患発症予防に効果的—。顔をしかめたくなるような見出しかもしれないが,スウェーデン・クイーンシルビア小児病院小児アレルギー科のBill Hesselmar氏らが,同国の出生コホートを対象に,親の唾液に含まれる細菌がアレルギー疾患発症予防に効果があるかについて検討したところ,親の唾液を“与えられた”児では18カ月後の喘息発症のリスクが9割,アトピー性皮膚炎発症のリスクで6割減少していたという。さて,その簡単な“投与”方法とは? 

新生児184人対象,おしゃぶり使用の有無や“洗浄”方法別に比較

  物質的に豊かな国々では,児の3人に1人が罹患しているとされるアレルギー疾患。原因の1つとして注目されているのが,乳幼児を取り巻く環境が極端に衛生的になったことによるといわれる「衛生仮説」だ(BMJ 1989; 299: 1259-1260)。

  Hesselmar氏らは「事実,貧困,大家族,ペットや家畜との早期接触,食物媒介性細菌曝露などがアレルギー疾患発症リスク低下と関連している」とする報告に言及。「それらに加え,西洋社会では乳幼児期における腸内共生細菌の獲得が遅れていることなどがアレルギー疾患発症の危険因子であるとも指摘されている」と続けた。

  同氏らは,親が口腔内に入れたおしゃぶりを児にくわえさせることによるアレルギー疾患発症の予防効果を検討するため,同国の出生コホートを対象に研究を行った。

  対象は,1998〜2003年に妊娠していた女性206人から生まれた児のうち,妊娠38週未満や新生児集中治療中などを除く出生後1〜3日の新生児184人。両親が記録した離乳,食事,疾患,服薬などのデータを6カ月時および12カ月時に電話インタビューで収集。6カ月時の電話インタビューでは,児のおしゃぶり使用の有無と“洗浄”方法(熱湯,水道水,親の口腔内から選択で複数回答可)を尋ねた。なお,新生児のいずれかの親のアレルギー疾患有病率は80%であった。

おしゃぶりの使用自体には効果なし

  184人の新生児全員を18カ月まで,そのうち174人については36カ月まで追跡。出生後6カ月以内のおしゃぶりの使用は136人(74%)で,洗浄方法は熱湯が74人(54%),水道水が113人(83%),親の口腔内が65人(48%)であった。一方,アレルギー疾患の発症は,18カ月ではアトピー性皮膚炎が46人(25%),喘息が10人(5%),36カ月では順に40人(23%),14人(8%)であった。

  上記について,おしゃぶり使用の有無および洗浄方法の違いによる出生後18カ月でのアレルギー疾患発症についてオッズ比(OR)を求めた。その結果,おしゃぶり使用の有無ではアトピー性皮膚炎および喘息のいずれの発症においても有意差は認められなかった。一方,熱湯洗浄とその他の洗浄方法を比較した結果,有意差は認められなかったものの,熱湯洗浄では喘息発症の上昇傾向が見られた。また,親の口腔内洗浄では,その他の洗浄方法に比べ,有意なリスクの減少が認められた〔ORは,アトピー性皮膚炎0.37(95%CI 0.15〜0.91,P=0.02),喘息0.12(同0.01〜0.99,P=0.03)〕。食物や吸入抗原への感作についても同様に検討したところ,有意差は示されなかったが,親の口腔内洗浄でリスクの減少傾向が見られた〔OR 0.37(同0.10〜1.27,P=0.08),〕。

36カ月時でもアトピー性皮膚炎のリスクは減少

  さらに,36カ月まで追跡した174人については,熱湯・水道水のみで洗浄したおしゃぶりを使用していた児に対する,親の口腔内洗浄によるおしゃぶりを使用していた児のアレルギー疾患の発症リスクを検討。その結果,ハザード比(HR)は,アトピー性皮膚炎が0.51(95%CI 0.26〜0.98,P=0.04),喘息が0.31(同0.08〜1.19,P=0.09),抗原感作が0.60(同0.26〜1.41,P=0.26)で,アトピー性皮膚炎でのみ有意なリスクの減少が認められ,それ以外では減少傾向が見られた。

  今回の結果に対して,Hesselmar氏らは「出生後早期での腸内細菌獲得がアレルギー疾患の発症を予防するとされているが,今回の研究により,親の口腔内“洗浄”でおしゃぶりを介して細菌が児に移され,アレルギー疾患の発症を抑制した可能性が示唆された」と結論。この方法が「シンプルかつ安全な方法」と主張し,さらなる研究の必要性を訴えた。

 

医師のための専門情報サイト MT-pro 2013年5月10日 掲載分より転載

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