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昭和大学歯学部 文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 平成30年度シンポジウム開催

木. 9 5月 2019

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昭和大学歯学部が5カ年計画で進めてきた「口腔機能維持・回復のための集学的研究開発拠点の形成」(代表:美島健二・昭和大学歯学部教授)の平成30(2018)年度シンポジウムが3月16日(土)、昭和大学歯科病院(東京都大田区)にて開催された。

これは、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業として文部科学省より支援を受けて本学歯学部を中心に進めてきた大規模研究プロジェクトである。

平成26(2014)年度に開始された「口腔機能維持・回復のための集学的研究開発拠点の形成」プロジェクトでは、基礎・臨床の研究者による相互的協力体制の推進により、①科学的エビデンスに基づいた治療方法の開発、②これまで不明であった、口腔ケアや口腔疾患医療の効果を科学的に証明し、従来の医療の再考・改良の牽引、③医学部を含めた各専門分野の研究者が連携することで、これまで不明であった口腔と全身疾患との関係の解明、④次世代の口腔疾患治療に応用可能な現実性の高い医療技術基盤を構築することにより、歯科におけるイノベーションの提言、の4つの研究課題について事業が進められ、本年が最終年度となる。

宮崎隆昭和大学歯学部長による開会挨拶の後、九州大学大学院歯学研究院口腔保健推進学講座口腔予防医学分野の山下喜久教授による「口腔細菌叢の育成と管理を介した歯科医療の新戦略」と筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史教授による「睡眠覚醒の謎に挑む」の2題の特別講演がそれぞれ行われた。

山下先生は、日本の口腔保健状況に関し、若年者のう蝕の減少、ならびに80歳で20歯を有する8020達成者の増加など、口腔保健状況が激変している現状を説明され、今後は口腔の予防および口腔機能の維持・回復が重要であると述べられた。その中で、口腔マイクロバイオームの管理が、歯科保健医療の担うべき領域の一つではないかと考えられた。

マイクロバイオームとは微生物のゲノムの集合体を示す言葉で、ノーベル生理学・医学賞を受賞したJoshua Lederbergらによって提唱されてきた。近年、次世代シークエンサーなどの技術向上により口腔マイクロバイオーム研究は飛躍的に進歩し、特定の口腔細菌種がう蝕や歯周疾患の主要な原因菌として重要な役割を果たすことが示唆されてきた。また、う蝕や歯周疾患の発症には単に主要な原因菌の増減だけでなく、その周囲の常在菌の状態が重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。

口腔マイクロバイオームのバランスは口腔のみならず、全身の健康にも影響を与えることが明らかになってきており、口腔マイクロバイオームの管理は単に口腔疾患の予防にとどまらず、全身の健康の維持にも大きく影響すると述べられた。口腔マイクロバイオーム管理を中心とした未来の歯科医療の可能性についてお話いただいた山下先生のご講演に、聴講者は熱心に耳を傾けていた。

柳沢先生は、中枢神経系を持つ動物種に普遍的な現象である睡眠・覚醒の機能と制御メカニズムの解明に力を注がれており、突然変異を誘発したマウスを作成し、脳波測定により睡眠覚醒異常を示すマウスを選別して原因遺伝子変異を同定するという探索的アプローチを行ってこられた。なぜ睡眠が必要なのかなど、大変興味深いお話をしていただいた。

引き続き行われた、各プロジェクトの研究分担者による研究成果報告会では、研究成果がポスター発表され、会場の参加者を交えた活発な議論と意見交換が行われ、本事業の研究の総括的発表となった。

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