DT News - Japan - 早期う蝕予防を目的とした母乳育児の方針を変更,米国歯科医師会

Search Dental Tribune

早期う蝕予防を目的とした母乳育児の方針を変更,米国歯科医師会

Medical Tribune, Inc.

Medical Tribune, Inc.

水. 27 2月 2013

保存する

米国歯科医師会(ADA)は“Breastfeeding- An overview of oral and general health benefits”と題するレポートを発表(J Am Dent Assoc2013; 144: 143-151)。従来,歯科医師や関係者の間で推奨されていた「乳歯が萌出してからは制限なしの母乳育児を避け,炭水化物食を開始する」との方針を変更し,生後6カ月までの完全母乳および離乳食開始以降の母乳継続を支持する姿勢を示した。早期う蝕予防については布や柔らかい歯ブラシを用いた口腔内細菌のコロナイゼーション抑制を引き続き勧める意向だという。

母乳と早期う蝕の関連「十分なエビデンスなし」
レポートは,母乳育児が母子にもたらす健康面のベネフィットならびに母乳と乳歯萌出,あるいは早期う蝕との関連を報告した文献や主要な組織からの母乳育児に関する声明などを基に作成された。
レビューの結果,母乳育児が行われた場合,人工乳の場合に比べ急性中耳炎や胃腸炎,下痢や重症の下気道感染症,喘息,乳幼児突然死症候群(SIDS),肥満や乳幼児期に多く見られる他の疾患や症状のリスク低減が確認された。また,乳歯咬合への好ましい影響を示唆するエビデンスもあったとしている。
一方,母乳と早期う蝕の関連については,一貫した結論が得られていない他,フッ化物曝露や食事習慣,口腔内衛生習慣などの因子が補正されているのか不明な報告もあり,両者を関連付ける十分なエビデンスはないと述べている。
その上で今回,「母乳を与えた後に保護者は児の歯肉および歯を布や柔らかい歯ブラシでやさしくクリーニングする」との米国小児歯科学会の勧告と「生後6カ月までは完全母乳育児を行い,離乳食開始後および生後12カ月以降も母子が望む限り母乳を継続してもよい」との米国小児科学会(AAP)の勧告を支持する姿勢を示している。

小児科,歯科で異なる見解「保護者が混乱する可能性」
今回の声明,歯科の立場からは反対の意見が根強く出る可能性もうかがえる。実際,レポートでは,これまで複数の歯科団体は早期う蝕防止の観点から,乳歯萌出後の授乳は控える立場を示していたことも記されている。
ただし,ADAはこうした勧告がAAPと異なる見解であったために,保護者が混乱する可能性があったと指摘。既に他の医学,公衆衛生学の学術団体もAAPと同様の見解を示している他,2011年当時の米公衆衛生局長官(Regina M. Benjamin氏)による「全ての臨床医は医療行為が母乳育児との両立が可能か,あるいは母乳育児を妨げてしまう可能性のある診療を行っていないかを確認する」との声明も紹介。その上で,ADAは歯科医師および関係者が母乳育児と口腔内の健康維持を両立させるための次なるステップを踏むべきとの見解を示している。

医師のための専門情報サイト MT-pro 2013年2月19日 掲載分より転載
 

To post a reply please login or register
advertisement
advertisement