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世界は今、どこへ向かうのか?【オランダ発】先端医療と予防が共存する国オランダ

世界は今、どこへ向かうのか?【オランダ発】先端医療と予防が共存する国オランダ
Blanc Networks,Inc Japan

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水. 20 6月 2018

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グローバル化が進むことによって、歯科医療の情報格差はもはや過去のものとなった。世界は、今後、どこに向かうのか?各国の最前線レポートをお送りする。

3D解析による診査、診断、術前シミュレーションなど、オランダでもデジタルデンティストリーの応用が進む。同時に予防医学とのバランス感覚も絶妙だ。

進む口腔外科領域での3D解析と応用

医療の進歩とともに、疾患への解釈や診査診断方法、治療方法はこれまでに大きく変化を遂げてきた。それは口腔外科領域においても同様である。

まだ日進月歩の医療だが、その反面で疾患に対する治療の根本的な概念や術式が、かつてのように大きく変わるということは徐々に少なくなっていくと予想している。細かなマイナーチェンジはあっても、誰もが思いつかなかったような新たな術式が生まれるということは減っていくだろう(ゼロにはならないが)。

それよりも、今後、医療の進歩に重要となってくる要素は、診査診断機器やプランニングのデバイス、実際の臨床現場で使用されるツールやマテリアルの発展だろう。

オランダに渡って1年半、実際に見聞きしてきた情報からも、その様子が強くうかがえる。私がお世話になっているマーストリヒト大学病院の講座でも、3Dデータの応用(解析)がトレンドの柱だ。中でもPatient Specific Implants(PSIs)の頭蓋骨欠損症例に対する応用や、個々の患者さんの3Dデータから、Additive Manufacturing(付加製造)によって作成された、下顎骨再建プレートの利用などが積極的に行われている(頭蓋骨欠損症例では、生体活性を改善するための生体材料のリサーチにも関心が集まっている)。

また、頭蓋骨欠損症例や顔面非対称症例、重度の中顔面外傷症例などにおける、健側の3次元構造を患側にミラーリングして行うシミュレーションや、顎変形症におけるバーチャルプランニング、腓骨再建時のカッティングガイドと、どれをとっても3D解析が重要な役割を担っている。従って、臨床に3Dを応用するための3Dコンピュータや3Dプリンター、使用されるマテリアルの研究・改良、そうして出来上がったカスタムメイドのプレートやガイドの臨床応用が、トレンドでありフロントラインだ。

予防が歯科医療の常識として根付く国

日本人としての立場から見ると、オランダの予防歯科事情は、今まさに全盛期を迎えている日本に比べると、いささか盛り上がりに欠けるようだ。これは、古くからすでに予防という分野に強い関心が向けられていたからかもしれない。

というのも、1950年代から1960年代にはオランダで有名な大規模研究(Tiel - Culemborgの研究)が行われた。この研究で彼らは、フッ化物の使用に焦点を当て、飲料水から虫歯の発生率/罹患率を評価した。その後、歯科分野では、予防とフッ化物の使用に多くの注意が払われてきた。オランダの飲料水には、法的問題のために全国的にフッ化物を添加するには至らなかったようだが、彼らは一般的に歯磨き粉にフッ化物を使用するようになった。また、クリニックではフッ素塗布が行われるようになった。

次に、歯科衛生士はオランダでも非常に一般的で、1次予防(小児歯科、歯磨指導)と、2次予防(歯周治療)で重要な役割を担っている。しかし、歯科衛生士の歴史は日本の方が古いことは意外な点かもしれない。日本では1948年に歯科衛生士法が制定され本格的な教育が開始されているのに対し、オランダで歯科衛生士の教育が始まったのは今からちょうど50年前の1968年のことだった。

また、医療費の面からも予防への意識の高さを感じる。というのもオランダでは、18歳未満の歯科治療はすべて保険でカバーされており、6カ月ごとの定期健診代もそれに含まれているのだ。カリエスリスクの高い患者さんには、シーラントやフッ素塗布を積極的に行うようだが、それらもすべて無料だ。国の政策レベルでの予防歯科に対する関心の高さが見て取れる。

 

小山慶介: マーストリヒト大学頭蓋顎顔面外科学講座 歯科・口腔外科医(日本口腔外科学会認定医)

 

 

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