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世界の歯科の動きにアンテナを巡らせ、 日本の優れた歯科医療を世界へ発信

上條 竜太郎 日本歯科医師会国際渉外委員会 委員/FDI世界歯科連盟学術委員会 委員/昭和大学歯学部口腔生化学講座 教授
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日. 29 10月 2017

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上條 竜太郎(かみじょう・りゅうたろう)1987年に昭和大学歯学部卒業後、同大学大学院(口腔外科学専攻)を1991年に修了。同大学歯学部第二口腔外科学教室助手を経て、1991年と1999年にニューヨーク大学医学部留学。2001年に帰国し、昭和大学口腔生化学教室教授に就任、現在に至る。日本歯科医師会学術委員会委員(2011~2015年)を務めた後、同国際渉外委員会委員。2015年からはFDI世界歯科連盟学術委員会委員。現在、東京歯科大学客員教授、東京医科大学客員教授、国際歯科研究学会日本部会理事、日本歯科医学教育学会監事、歯科基礎医学会常任理事、日本口腔組織培養学会会長を務める。

日本の役割は診療、研究、教育での世界貢献
世界レベルでの口腔保健向上を目的に結成されたFDI(世界歯科連盟)は、ジュネーブに本拠を置き、120を超える国・地域の歯科医師会組織が加盟する連盟で、所属する歯科医師数は10万人以上です。日本歯科医師会も加盟しており、中心的な役割を担い、リーダー的な存在として活動しています。
現在、FDI連盟理事として井上孝先生(東京歯科大学教授)、予算委員会委員として小林慶太先生(日本歯科医師会常務理事)、平野裕之先生(日本歯科医師会国際渉外委員会委員長)と私が常置委員会の委員としてFDIで活動しています。
FDIの活動に参加してわかったことは、世界の歯科医療の現状と課題の多様性です。世界から日本の歯科医療を見ると、技術や材料は世界のトップレベルであると感じています。それらを世界に広め、指導していくことが日本の役割だと思います。
同時に、世界貢献という点でも、日本は大きな期待を寄せられています。医療には診療、研究、教育という3つの大事な柱がありますが、例えば教育では、日本の大学は東南アジアその他の国々から学生を数多く受け入れ、日本の歯科医療を教え、日本で学んだ学生たちが母国に帰ってその国の歯科医療を担っていくなど、大きな貢献を果たしています。
研究でも、基礎歯学研究と、それを基盤とした歯科薬剤の開発、新たな検査、診断、治療法の確立などにおいて、日本は他国の追随を許さないほど進んでおり、その優れた成果を世界に広めていく役割があります。

海外の情報も吸収し、バランス感覚を養う
日本は世界でも、リーダー的存在として、さまざまな情報を発信しています。しかし一方で、私たちも歯科医療におけるグローバルな視点が重要で、そのためには日本からの情報発信だけではなく、他国の医療環境を理解する必要があります。
例えばアマルガムは、水銀と錫などからなる歯科材料で、かつて日本では歯科臨床で広く使われていました。しかし現在では、ほとんど使われていません。
歯科医療はその国の社会環境、経済状況と伝統の上に立脚しています。そのせいもあり、世界各国では、アマルガムがまだ圧倒的に使われています。日本で日常的に成り立っている歯科診療が、世界でも同様に行われているのではない、ということを知っておく必要があります。
このようにアマルガム一つとっても、世界ではどのような動向を示しているのか、いつも世界に向けてアンテナを張り巡らせ、世界の情報を複合的に収集していくことが大切です。

 

キーワードは、多職種や地域との「連携」
世界に目を向けたとき、医療の流れは治療から予防へと移っていることがわかります。歯科においてもそのゴールは、「治す」ことではなく「予防」することです。
例えば歯周病は、全身疾患とかかわっていることが広く理解されています。歯周病に限らず、口は決して独立した組織ではありませんから、口腔保健の維持、向上は歯科に限定した知識のみでは達成できません。
また、生涯にわたって健康に生きていくためには、健康な歯を維持していくと同時に、唾液腺や口腔粘膜、歯肉、骨もよい状態に保っていかなければなりません。従って、これまでの歯科医は歯を治療することが主体と思われがちでしたが、これからは、広い視点からサポートできる医療を提供する歯科医が必要です。
そのためには、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、栄養士、ケアスタッフなどによる「多職種連携」、在宅の高齢者や病気の人を地域で支える「地域連携」、患者さんの疾患や全身状態により地域の専門クリニックや中核病院に紹介する「病診連携」などが非常に重要になってくるでしょう。
昭和大学では、多職種連携を基盤とした「チーム医療」を全学挙げて推進しています。そして、さまざまな職種や機関と連携することで、歯科医療の幅も広がり、医療の中での歯科の位置づけも変わってくると信じています。

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