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〔ロンドン〕カロリンスカ研究所(スウェーデン・ストックホルム)歯学部門のBirgitta Söder氏らは「スウェーデン人1,390人を24年間追跡した結果,デンタルプラークの持続的な付着により早期死亡リスクが上昇することが確認された」とBMJ Open(2012; 2: 2e001083)に発表した。同氏らは口腔内の衛生不良が感染症や炎症につながり,がん死をもたらした可能性があると推測している。
死亡時の平均年齢はほぼ60歳
プラークは細菌が凝集して形成されたバイオフィルムであり,歯と歯茎の境の歯周ポケットなど歯の表面を覆う。プラークの付着は,う蝕や歯肉炎を促進し,歯の喪失に至ることもある。
今回の背景情報によると,プラークは感染症や炎症にもつながることから全身の健康状態との関連も指摘されている。また,感染症や炎症は全悪性腫瘍の15〜20%に関与することが分かっている。こうした背景を踏まえ,今回の研究では,プラーク付着とがんによる早期死亡との関係が検討された。
1985年にストックホルム在住の成人(30〜40歳)を住民登録からランダムに抽出し,明白な歯周病が認められなかった1,390人を2009年まで24年間追跡した。全例が追跡開始時に,喫煙や経済状態などのがん危険因子に関する質問票に回答した。また,口腔内の衛生状態を評価し,プラーク・歯石の付着,歯周病,歯の喪失状況を評価した。
2009年までに58人が死亡し,そのうち22人が女性であった。また,死亡者のうちがん死は35人であった。Söder氏は,死亡した集団について「死亡時の平均年齢は女性61歳,男性60歳であった。スウェーデンの統計データによる標準余命はこれらより女性で約13.1年,男性で8.6年長いことを考慮すると,この集団では男女ともに早期に死亡していると判断できる」と述べている。
死因となったがんは,女性では乳がんが最も多かったが,男性では多岐にわたっていた。
「プラーク付着」「高齢」「男性」は,死亡の予測因子
死亡者のプラーク指数(dental plaque index)は,生存者と比べて高く,歯茎もプラークで覆われていることを示す0.84〜0.91の範囲であった。一方,生存者のプラーク指数は低く,歯茎には部分的にしか付着していないことを示す0.66〜0.67であった。
多変量解析の結果,プラーク付着は観察期間中の死亡の独立した予測因子(オッズ比1.79)であることが分かった。プラーク以外では「高齢」と「男性」が死亡の予測因子で,死亡リスクは高齢者で1.98倍,男性で1.91倍に上昇した。「低学歴」「喫煙」「歯科受診頻度」「低所得」など,早期死亡との関連が知られている潜在的危険因子で調整しても,「高齢」「男性」「プラーク付着」と早期死亡との関連は変わらなかった。
24年間の追跡期間中の死亡は1,390人中58人であったことから,この集団全体の早期死亡の絶対リスクは低いと考えられるが,プラーク付着群でリスクが大幅に上昇(79%)していた。
Söder氏は「今回の研究では,当初のプラーク付着に反映される口腔内の衛生不良とがんによる早期死亡が相関するという仮説は支持されたが,プラークががん発症の直接の原因となるかどうかは示されていない。今回観察された相関の因果関係については,別の研究で明らかにする必要がある」と述べている。
Medical Tribune 2012年8月16日 Vol.45, No.33, P2より転載
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