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インタビュー:ヒトによる咬傷で健康に深刻な影響を及ぼすこともある

ウルグアイ代表のルイス・スアレスはW杯ブラジル大会での試合中、イタリアのディフェンダーに噛みついた。(Photograph: AGIF/Shutterstock)
Daniel Zimmermann, DTI

Daniel Zimmermann, DTI

火. 8 7月 2014

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今年ブラジルでは、32の国と地域からの代表サッカーチームがW杯トロフィーをかけて争っている。デンタル・トリビューン・オンラインは、FIFAの指名歯科医も経験し、ドイツ・ブンデスリーガ、アイントラハト・フランクフルトのデンタルケアを受け持つ、ディートリッヒ・フィッシャー-ブルックス博士(ドイツ)と話す機会を得た。サッカー選手たちの口腔衛生について、また、ウルグアイのスーパースターであるルイス・スアレスが試合中にイタリア人選手に対して噛みついたことが、なぜ深刻な影響を及ぼす可能性があるのかについて、博士に尋ねた。

―フィッシャー-ブルックス博士、ルイス・スアレスが起こした噛みつき事件は、今年のW杯大会で大きく報道されています。長期の出場停止ということですが、この事件によって彼自身の口腔衛生に何か影響はありますか。

 影響があるとすれば、噛まれた側のイタリア代表のジョルジョ・キエッリーニのほうです。口腔内には多種多様の有害な細菌が生息していて、ヒトによる咬傷が深刻な影響を健康に及ぼすことがあります。私はそうした咬傷による重症の感染症例をいくつか知っています。

―スアレスはこの事件のあと、痛みに苦しんでいる様子が見られましたが、これは本当だったのでしょうか、それとも演技だったのでしょうか。

 私は演技だったと思っています。噛まれたと気が付いて、イタリア人ディフェンダーはスアレスを殴ったように見えましたが、彼が本当にスアレスを殴ったかどうかは憶測に過ぎません。

―試合後、あなたはスアレスが歯科医を受診するべきだったと思いますか。

 彼が実際に口腔を殴られていたならそう思います。しかし、その後まもなく彼がインタビューに答えているのを見ましたが、それほど悪い状態を示してはいませんでした。

―サッカーにおいては、肘による衝撃はしばしば歯の損傷の原因になりますか。

 間違いなくなり得ます。私がフランクフルトで定期的に診ている選手たちの多くは、選手キャリアのどこかの時点で前歯の損傷を受けています。そのため彼らはプレー中にマウス・ガードを着用していますが、試合後のインタビューで(マウス・ガードの着用が)しばしば見られます。

―選手たちはW杯のような大会中、歯科検診を受ける義務がありますか。それとも、口腔衛生は彼ら自身の個人的な責任だと考えられていますか。

 これは、実際にはスタッフたちのプロ意識に依るところが大きいのですが、原則として大会の前に、口腔内や顎、その他顔面に感染症の兆候がないか、選手たちを検査する必要があります。

 また、ピッチ上で心臓突然死を引き起こす選手は珍しくありません。これらのケースの多くは、歯の問題から生じた重症の感染症であった可能性があります。そうした重症の感染症として、第三大臼歯の感染、重度の歯周炎、歯内治療による感染症などがあります。

―そうした問題は、選手たちの健康やパフォーマンスにどのような影響を及ぼしますか。

 ヒトの体のどこからであっても、細菌の侵入は心臓弁に影響します。また、膝などの関節炎を引き起こすこともあります。フランクフルトでプレーをしていて、チェコの代表チームにもいた選手ですが、つま先に瘻孔ができて何カ月もサッカーシューズを履けなかったことがありました。我々は最終的に第三大臼歯の感染症が原因だと特定できましたが、抜歯をしたその日のうちに瘻孔は消え、選手はトレーニングを再開することができたのです。

 この種の関連性を認識することができなかったり、あるいは訓練不足などが原因で、チームドクターはこうした症状にしばしば悩まされます。今あげた例は、口腔内の細菌が体の離れた部分にも移行できることを明確に示しており、多くのケースでは、それはまず心臓に影響するのです。

―サッカー選手は有名人(セレブ)であり、自分たちの身体イメージにかなりの注意を払っていますが、そうした点から、良い歯というのはどれくらい重要なものですか。

 まっすぐで魅力的な歯は、成功のシンボルと言えます。しかし、2~3カ月おきに歯の検診に私のところに来る選手のことは、「歯フェチ」と呼ばざるをえないでしょうね。また、多くの外国人選手、特に東ヨーロッパ出身の選手においては、子供のときに適切な歯科治療を受けていなかったことが明らかです。そのため、そうした選手たちには大がかりな歯科治療を行わなければならないことがよくあります。

―2006年のドイツ大会では、あなたはイングランドとサウジ・アラビアの歯科診療を任されていましたが、彼らの口腔衛生について何か違いが見られましたか。

 国の違いによって、かなりの不平等があります。例えば、イングランドの歯科治療は(一般的な健康管理と同様に)ベストというわけではありません。これは、歯並びの悪さや欠陥のある詰め物、二流の歯科学を示すその他の事柄からも明らかです。ドイツやスイスで行われているような質の高いオーラルヘルスケアは、一般的ではありません。

―仕事を通じて、サッカー選手たちの歯に以前より注意を払うようになりましたか。また、最近特に印象に残る歯を持った選手がいたら教えてください。

 コロンビアのハメス・ロドリゲス選手にすっかり魅了されました。この若い選手は非常に魅力的な歯の持ち主です。また私は現在、インタビュー時の選手たちによく見られる「歯の食いしばり」に注意を向けています。審美的な面と医学的な面の両方の観点からです。

―どのチームが決勝に勝ち残ると思いますか。

 最初のうち、私はヨーロッパのチームが準決勝まで残るとは思っていませんでしたが、もはやそうした確信は持てなくなりました。W杯をかけての争いは、ブラジル、オランダ、ドイツの間で競われる可能性が高いと思います。

―ありがとうございました。

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