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山﨑 長郎(やまざき・まさお)1970年、東京歯科大学卒業。1974年に原宿デンタルオフィスを開院し、現在に至る。現在、日本臨床歯科医学会理事長、および東京S.J.C.D.最高顧問を務める。補綴治療、特に審美修復の分野における第一人者として、47年以上のキャリアを有する。単著・共著合わせて10以上の著書、多数の論文発表があるほか、国内外における学会でも数多くの講演を行っている。
欧米との違いは歯科の考え方、取り組み方
私は30年くらい前から欧米に赴き、現在でも年に数回は欧米や中国、韓国を訪れ、歯科の学会や交流会に参加し、今ではニューヨーク大学やコロンビア大学で講演をするようにもなりました。
こうした海外との交流の中で、日本と海外、特に欧米との歯科の違いを感じるのは、歯科医としての学力や技術には差はありませんが、大きく違うのが、歯科に対する考え方や取り組み方です。
特に欧米では、よく勉強しないまま、あるいは自分の力の範囲を超える難しいケースを抱えてしまうと、すぐに裁判を起こされてしまいます。そういう点で海外の歯科医は、常に緊張感と責任感を持って取り組んでいるといえるでしょう。
日本でも、多くのトラブルの原因は、自分の能力を過信し、複雑なケースを引き受けた結果、問題となることが多いのです。一昔前では矯正が問題となっていましたが、今は圧倒的にインプラントで、裁判でも最も多くなっています。
私が海外から学んだ最も大切なことは、自分の力を客観的に判断し、できないことはその分野の専門医に送るなど、自分の守備範囲をしっかり守ることです。
中国、韓国、台湾と交流し、日本がリーダーシップを
欧米から情報を収集し、かつ現地を訪れて、その地域の歯科の潮流を肌で感じることは、とても大切です。一方で、これからは情報を受けるだけでなく、日本の歯科情報を海外へ発信していくことが重要になると考えます。
そのためには、語学、とりわけ英語は必須です。そこで若い人には、ぜひ今のうちから、英語を身に付けておいてほしいと思います。
また、歯科医療での世界戦略を考えたとき、これからの有望なマーケットはやはり中国です。韓国や台湾とも交流を図っていますが、私は5年間にわたり中国に行き続け、中国は高いポテンシャリティを備えていると感じています。中国の13億人のうち、歯科治療を受けたことがあるのはわずか1億人で、残りの12億人は生まれてから一度も歯科に行ったことがないといわれています。成熟した日本とは異なり、中国には伸びしろのある巨大なマーケットがあります。
これからは、中国や韓国、台湾との交流をさらに深め、日本の持つ歯科情報を発信していくことで、日本はアジアのリーダーになれるでしょう。
医科の一歩先を行く、歯科の予防、健康医療
私が海外の人と交流し、さまざまな情報と接していて思うのは、日本は歯科医の地位が低すぎることです。例えばコロンビア大学の歯科医は、アメリカで一番尊敬されている職業であるのに、日本では歯科医の尊敬度は200位ぐらいで、医師に比べかなり低いです。
その理由として考えられるのは、一つには日本の歯科業界がしっかりとプロモーションをしてこなかったこと。もう一つは、歯科医に自覚や責任感が不足していることです。
確かに医科は命を救う局面も多いのですが、多くは対症療法です。しかし、今の歯科は健康医療や予防医療に向かっていて、医科より一歩先を進んでいるのです。つまり、審美や矯正によって、人々の生活を豊かにできる、人の生き方が変えられるといってもいいでしょう。
歯科医としての知識や技術に自信を持つためにも、日本の中だけでなく、世界に目を向け、世界の情報にくまなく目を通し、そこから吸収して得たものを自分の糧として、将来はそれを世界に向けて発信していってほしいと思います。
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