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世界は今、どこへ向かうのか?【サウジアラビア発】欧米と肩を並べる教育制度と専門医制度

世界は今、どこへ向かうのか?【サウジアラビア発】歯学部付属病院の外観
Blanc Networks,Inc Japan

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月. 12 3月 2018

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グローバル化が進むことによって、歯科医療の情報格差はもはや過去のものとなった。世界は、今後、どこに向かうのか? 各国の最前線レポートをお送りする。

加速度的に変化するサウジ社会。歯科臨床、教育現場でもその進展はめざましい。欧米にならった専門医制度、研修制度がもたらすであろう発展は未知数だ。

劇的に変化するサウジ歯科医療も例外ではない

世界で唯一女性の運転が禁止されていたサウジアラビアで、ついに今年の6月から、女性が運転して良いことになる。春にはサウジ各地で映画館がオープンする。これまで禁止されていた女性のスポーツ観戦も解禁された。すごい勢いでサウジ社会が変化している。ボストンから歯周病科大学院のプログラムを作るためにサウジに赴任しているが、この国の歴史的瞬間を見られるのはとても面白い。

サウジの歯科医師はアメリカと同じく、専門医とGPに分けられる。ほとんどの専門医は、アメリカやイギリスで、4年以上の専門医教育を受けた人たちだ。GPはサウジの歯科大学でそれらの専門医に教育を受け、家庭医として専門医と協力しながら活躍している。歯科教育はすべて英語でなされ、患者の多くはアラビア語のほかに、英語または他の外国語を話す。

矯正医を例に挙げると、サウジで専門医教育を受けた人もいるが、多くはアメリカの専門医資格を持ち、治療には最新の技術を提供している。ただし数は少なく、高度な治療を要する症例では長く待つこともある。クリアーアラインメントセラピー*は、近年とても人気があり、約50%の症例でこの治療が行われている。

サウジ政府はGPの矯正治療を禁止している。世界基準で公認された資格を持つ専門医が手がける症例と、GPのトレーニングで手がける症例とを明確に分けた、3段階の規定がある。もしこれに違反すると、免許の失効と罰金が科される。補綴治療や歯内療法、歯周治療、インプラント療法、口腔外科も同様である。

補綴治療はテクノロジーの発達で、デジタルへの移行が顕著だ。サウジは保守的(?)と思われるが、公衆の場で顔を隠している女性たちが、実は欧米やアジアの女性たちよりエステティックに強い関心を持っている。ソーシャルメディアの解禁で、スターたちの口元をまねて歯を白くしたい、ベニアでもっと美しくなりたいなどの要望はアメリカよりはるかに強く、美に対する強烈な願望が伝わってくる。中世の格好でハイテクノロジーを使いこなし、普段見せない顔や口元、そして爪のアートなどに、女性は特に熱心だ。男性もとても清潔感に気を使っている。

レバノン、ヨルダン、シリア、スーダン、エジプトなど近隣諸国に比べて、はるかに良い給料のサウジにくるGPはたくさんいたが、昨年4月から就労許可の発行が停止された。サウジのGPがそれだけ育ってきたのだ。都市部では予防に対する強い動きが感じられる。歯科の発展はこれから益々進歩していくことだろう。

* 著者注:インビザラインのこと。商品名のため一般名で記した。

久世香澄:  サウジアラビア王国国立イマム・アブドラフマン・アルファイサル大学(旧称ダンマン大学)歯科医学部歯周病科 教授

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