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グローバル化が進むことによって、歯科医療の情報格差はもはや過去のものとなった。世界は、今後、どこに向かうのか?各国の最前線レポートをお送りする。
デジタルデンティストリーの恩恵は、もはや日常的である米国の歯科臨床。人の叡智との共存が課題だ。
診療のあらゆる場面で恩恵を受ける時代
世界の歯科事情を見渡すと、デジタル化の流れは加速度的に広がりを続けており、米国においてもそれはしかりである。デジタルX線、CBCT、口腔内スキャナー、ミリング、3Dプリンター、デジタルチャートなどデジタル化といってもその応用は多岐にわたり、診査・診断、治療計画の立案、補綴修復、外科治療、そしてオフィスのマネジメントなど、歯科診療に関わる多くの場面において何らかのデジタルテクノロジーを取り入れている歯科医院が増えてきているのは明白である。
条件がそろえば、1日で間接法による修復物の合着または接着が可能になり、また外科領域では、サージカルガイドを使うことで解剖学的に制約のある部位でも、比較的安全に治療計画通りにインプラントの埋入を行うことができる。また、従来の診断技術では確認が困難であった副根管や、歯根破折の診断が、より確実に行えるようになった。
このように、デジタルテクノロジーを応用することで、患者、歯科医師、歯科技工士等、歯科治療に関わるすべての人が恩恵を受けることは少なくなく、従来の技術やテクニックでは不可能であった作業がデジタルテクノロジーの応用で可能になることもある。
米国の大学教育においては、学生に可能な限りデジタルテクノロジーに触れる機会を与えるカリキュラムを組む大学が増えている。学生の臨床実習、そして実際の治療においてもCAD/CAMによるクラウン、インレーおよびアンレーや、パーシャルデンチャーのメタルフレームワークなどの補綴修復物のデザインおよび作製、またインプラント治療における診断ならびに治療計画立案、ガイディッドサージェリーによるインプラントの埋入などの臨床トレーニングが実際に行われている。
一般の歯科医療現場に目を移すと、公的な国民保険制度のない米国において、歯科治療は一般的に高額であるため、複数の歯科医院をチェーン展開して経営の合理化を図り、その分、診療費を抑えて歯科医療を提供するグループが増えてきている。経営者が歯科医でない場合もある。そのような診療グループでは、効率化を図ることを主目的にデジタルテクノロジーを取り入れ、診療内容は質より量という診療体系が多いのが現実である。
求められるバランス感覚
臨床現場において注意が必要なのは、デジタルテクノロジーがすべてを解決してくれると考えがちになることである。歯科治療において、必ず踏襲しなければいけないコンセプトやステップがある。これらの原則的なコンセプトに基づかないテクノロジーの応用は、かえってよくない臨床結果をもたらす可能性がある。
デジタルテクノロジーの応用に伴い、より正確な診査・診断が可能になり、新しい歯科材料が開発され、新しい治療のコンセプトやテクニックが生まれるなど、いろいろな分野が進歩し続けている。そういう状況だからこそ、一般の歯科診療の現場においても、教育現場においても、適正にテクノロジーを取り入れ、従来の不変のコンセプトとうまくバランスをとっていくことが求められている。
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