Dental Tribune Japan

スタディ・グループに聞く 女性歯科医師の会(WDC)、設立10年 生涯研修、仲間づくりを目指して

By Dental Tribune Japan
May 09, 2019

歯科医師としての責務は同じでも、女性歯科医師には出産、育児、介護などのライフイベントをこなしながら、自己研さんしていく宿命にあります。たとえ、一時的に臨床現場を離れたとしても、いつでも、どのレベルからでもスタートできる女性のための学びの場をつくることを目的に10年前、女性歯科医師のスタディ・グループ「WDC」(Women Dentists Club)が設立されました。今や全国的な女性歯科医師のネットワークを形成し、積極的に活動を展開。このたび、10周年を記念して講演会が開催されます。そこでWDC会長である林美穂先生に、WDC設立のいきさつからこれまでの活動内容、記念講演会への思いを伺いました。

ブランクのある人が臨床に戻れる環境を整備

女性歯科医師の数は年々増加し、2016年でその数は2万4,344人、歯科医師全体の総数に占める割合は23.3%(厚生労働省2016年医師・歯科医師・薬剤師調査)と、この20年間でその割合は約1.5倍になっています。また歯学部入学者の女性の割合も年々増加しており、今後、女性歯科医師が活躍する場はますます増えていくでしょう。

一方で、女性は出産や育児、介護などの女性特有のライフイベントに伴い、臨床の場を離れざるを得ない状況があります。再び歯科の臨床現場に戻りたいと、もう一度勉強しようと思ったとき、その人たちに合った勉強の場がなかったり、戻る環境が整っていなかったりする状況がありました。

多くのスタディ・グループは男性歯科医師を中心に運営されており、彼らはブランクなく勉強し続けているため、どんどん先に進んでいってしまいます。そのため、ブランクのある女性歯科医師にとっては、なかなか参加しづらいものです。また、歯科医師としての仕事のみならず、家庭を含めた女性特有の悩みもあります。

そこで女性歯科医師がいつでも勉強でき、技術の研さんを積む環境が必要であると考えました。さらに女性同士なら気兼ねなく学び合え、仕事だけでなく生活面でも悩みを相談したり、いろいろな知恵を提供し合い、助け合ったりできるのではないかと考え、2009年4月に、WDCという女性歯科医師のためのスタディ・グループを設立しました。

現在、会員数は約170人で、開業医を中心に研修医や勤務医もおり、20代から60代まで幅広い年代が在籍しています。西日本支部、東日本支部、関西支部ができ、ネットワークも日本全国に及んでいます。

女性歯科医師としてのキャリアや、出産や育児などライフプランをどうするか悩む人も多いと思いますが、WDCには日本各地から、さまざまな先生が参加されているので、自分のモデルとなる先生を見つけやすいと思います。さらに、女性としてのライフイベントをうまく乗り切ってきた先輩の先生方からアドバイスを受けることで、歯科医師としても、一人の女性としても、ステップアップして、ますます活躍していただきたいと思います。

 

第一線の講師を迎え最先端の知識、技術を学ぶ

WDCをつくるにあたり一番お世話になったのが、北九州地区のリーダー的な存在であり、「経基臨塾」を主宰されている下川公一先生です。下川先生のお力添えで、この会の設立に至りました。

設立当初は年次大会を年に2回ほど開き、講師の先生をお招きして講演を行っていましたが、現在は年次大会は年に1回にし、支部の月例会や講演など、支部ごとの活動が中心になっています。

第1回の年次大会では下川先生に特別講演を賜り、その後も第一線で活躍されている多くの先生方をお招きし、毎年クローズでWDC会員のための特別講演会を開催しています。京都の宮本泰和先生やJIADSの小野善弘先生、中村公雄先生にはご講演のみならず、関西支部立ち上げ時に多大なるご尽力をいただきました。

このほかにも、SJCDの山﨑長郎先生、本多正明先生、土屋賢司先生、予防歯科では景山正登先生、歯周治療では二階堂雅彦先生、水上哲也先生、咬合治療では筒井照子先生、顎関節と咬合については日本歯科大学の小出馨教授、歯内療法では石井宏先生、高齢者訪問歯科の分野では黒岩恭子先生、歯科技工士のレジェンドといわれる桑田正博先生などもお招きし、会員のリクエストも取り入れながらさまざまな角度から学べる会であることがWDCの特徴かもしれません。

支部の活動内容について、例えば私のいる西日本支部では、エンドやペリオなど、年間のテーマを決めて研修を行います。また、1本の歯の治療でも口腔内写真やデンタルエックス線10~14枚法などの資料をきちんと撮り、それを基に診査・診断し、治療計画を立案、治療していくような例会をしています。

新入会の先生には必ずデンタルと口腔内写真を撮ったものを提示してもらい、そこをチェックします。そのほか、症例を見ながらシミュレーションを行うなど、みんなでディスカッションして治療方針を立てるという症例検討会も行います。また各支部でも、特別外来講師を招聘したり、各自がテーマに沿ったプレゼンテーションを行ったりしています。

このような活動を続けた結果、女性歯科医師の中にも大きな仕事をする人たちが増えています。

 

女性ならではの気配りで患者さんの要望に応える

女性歯科医師の特長は、患者さんへの気配りや対応のきめ細やかさだと思います。それは家庭、子育て、介護などライフイベントを通して、細かいところに目が届くという視点が養われてきたからではないでしょうか。

患者さんは歯に問題を抱えて来院されますが、このほかにも基礎疾患などのさまざまな体の問題や、家庭での悩みを抱えていることもあります。特に男性歯科医師には話しづらいことでも、女性同士なら踏み込んで聞くことができ、それが歯の治療においても、患者さんの要望を引き出し、個別性を重視した治療計画を立てることにつながります。

また、歯科衛生士や受付スタッフもほとんどが女性のため、コミュニケーションが取りやすく、アットホームな雰囲気で患者さんを迎えられるなど、女性ならではの特性を歯科医療にも生かして、ぜひ多くの女性歯科医師に、仕事を続けていっていただきたいです。

こうした思いで運営してきたWDCも着実な歩みを続け、今年、10周年を迎えることができました。そこで、これまで会をサポートしてくださった先生方や企業の皆さまに感謝の気持ちをこめて、さらに、若い先生方にも当会を知っていただくために、「10周年記念講演会」を開催します(カコミ参照)。

内容は当会をサポートしてくださっている土屋賢司先生、瀧野裕行先生、下川公一先生の特別講演と、各支部の支部長および私の講演です。また今回は、男性歯科医師にもオープンにしていますので、ぜひ多くの方に参加していただきたいと思います。

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