Dental Tribune Japan

カリオロジーのトレンドを知る 「世界のう窩をなくす」を目標に独自の活動を展開するACFF日本支部

October 01, 2019

「2026年以降に誕生する子供たちは生涯をとおしてう窩を作らない」を地球規模でのゴールに設定し、2010年に発足した国際非営利組織であるACFF(Alliance for a Cavity Free Future)。2018年2月に、一般社団法人ACFF日本支部が発足し、独自のプロジェクトを展開しています。そこで、日本支部の理事長を務める大阪大学教授の林美加子先生に、グローバルなACFFの設立趣旨や活動、日本支部の活動についてお伺いしました。

う窩がない未来を目指し世界の28地域で活動

ACFFは「う窩がない未来を目指そう」という、国際的なチャリティーです。ポイントは「う蝕」ではなく「う窩」。つまり、キャビティーフリーの撲滅、を実現可能なゴールとして設定しています。

2010年、イギリスのロンドンで発足し、4つの大きな目標を設定し、活動を行っています。

1つ目が、2026年以降に生まれる子どものキャビティーフリーを達成すること。2つ目が、「モダン・カリオロジー教育の浸透」。すなわち、歯科でよくいう「削って、填めて、請求する」ということではなく、生物学的に回復可能な歯質は大切にしていこうという考えや、教育を浸透させていくことです。3つ目が、口腔と全身の健康状態を視野に、世界あるいは地域での、う蝕発生の不均衡を是正するために、幅広い組織と協力して活動することです。4つ目は、2020年までに、 ACFFの地域のメンバーが一体となり、包括的かつ地域に適したう蝕予防およびマネジメントのシステムと、それをモニタリングする取り組みが浸透する環境を整えることです。

ACFFの最初のチャプター(支部)は、2011年5月にコロンビアで発足し、その後メキシコ、ブラジル、ベネズエラが続きました。2012年には中国、2013年はヨーロッパ、2014年には急成長して支部が増え、2018年2月に27番目として日本支部が登録されました。2019年にはスペインが加わり、現在28地域で活動していますが、その地域はさらに広がりつつあります。

各支部の活動は、①専門家の教育、②公衆衛生に関する教育、③口腔保健の不均衡の是正、④学際的協力、⑤地域のプログラム、⑥ ICDAS/ICCMS™の推進、という6つのアプローチがあります。

ACFFのユニークなところは、これらに関することであれば支部は何に取り組んでもよいことです。目標の達成に向けて、自分たちの状況や健康の状態、経済状態、患者さんの思考などに合わせて活動を推進するよう、裁量が与えられています。

 

日本支部の活動目標と活動フォーカス

日本支部の主たる活動目標は、「生涯にわたって効果的なう蝕マネジメントを促進する」ことです。そこでは、患者、教育者、研究者および行政に携わるすべてが、「う蝕は予防できる疾病であるが、幼児から高齢まで生涯にわたってリスクにさらされる」ことを、強く認識するように活動することです。

これらを実現するために、次の3つに活動のフォーカスを当てました。

まずは妊婦さん、あるいは母親教育をもっと充実させたい。次に、ICCMS™(International Caries Classification and Management System™)がヨーロッパでカリオロジーのマネジメントシステムとして確立しているため、それを日本の歯学教育に導入するように、歯学部、学術団体、行政に働きかけていきたいと考えています。もう一つは高齢者で、ACFFの本部は子どものことを中心に据えていますが、我々は高齢者の根面う蝕を予防するために、う蝕罹患に関する実態調査を行い、効果的な予防法を探索することにしました。

具体的な活動としては、①リサーチプロジェクトの実践、②国内外の学術団体との連携、③年次総会の開催、④会員の研修会、講演会の開催、⑤ホームページによる情報提供、⑥口腔保健・歯科医療に関わる諸団体との連携、の6つです。

 

日本支部独自の4つのプロジェクト

リサーチプロジェクトの1つ目は、コーク大学PhDの西真紀子先生による「Okuizoméプロジェクト」です。生後100日の時に、その子の生涯の健康を祈り、家族や親戚が集まって行われる「お食い初め」に、無料通信アプリ「LINE」を利用して健康情報を送り、家族や親戚の教育を行うプロジェクトです。私は母子手帳を活用するなど、行政と一緒に活動を進めてほしいと考えています。

2つ目のプロジェクトは、新潟大学の野杁由一郎先生の「高齢者の根面う蝕の謎に迫る」というものです。野杁先生の一番の業績は、根尖性歯周炎が治らないのは、根尖孔外にバイオフィルムが出ていくということを初めて見つけたことです。また、これまで高齢者に多発している根面う蝕は、口腔に露出している部分のみに発生し、歯周ポケットの中には発生しないと考えられていました。しかし、このプロジェクトでは仮説を立てて臨床サンプルを使い、根面う蝕の発生部位や原因となる細菌を特定する予定です。

3つ目は、鶴見大学の花田信弘先生の「理想的なオーラルフローラとは何か」というもので、先端的な遺伝子解析技術を使って、人のあるべきオーラルフローラを探求します。つまり、長寿の健康な細菌叢は何かが分かっていないため、それを遺伝子を見て検索するのです。

4つ目は私が進めている「ICCMS™翻訳プロジェクト」です。これは国際的学会組織が中心となり、日常臨床におけるう蝕の診断とマネジメントについて、17年にわたり議論を重ねた成果をICCMS™として包括的で詳細な具体案を提唱しています。世界でもこれが認知されていますので、まずは翻訳をして、我が国のう蝕予防・治療の臨床や教育に取り入れる可能性や方策について、ワークショップなどを開催して議論することを計画しています。そして、これを日本の臨床、教育のシステムに取り入れたいと考えています。ICCMS™のいいところは、eラーニングのシステムをしっかりつくっていて、「4つのDから入りましょう」と示していることです。この4つのD とは、DETERMINE(決定)、DETECT(検出)、DECIDE(決断)、DO(実行)です。

さらに4つのエレメントがあり、1はリスクアセスメント、2は診断する、3は情報を統合する、4はどのようにマネジメントしていくかというもので、これを日本の現状に合わせていこうと考えています。

 

国際チャリティーに興味ある臨床医は参画を

ACFF日本支部では研究プロジェクトを行いたいと考えていますので、一般社団法人として始めました。日本支部は4人の理事と、正会員は100人に限定していますが、現在の会員数は50人ほどです。また賛助会員(団体・企業)は14社で、活動趣旨にご賛同された企業から賛助金をいただいています。

この他、先ほど挙げた4つのプロジェクトには、リサーチワーキングメンバーが組織されており活動しています。これは、プロジェクトに自ら手を挙げた方には、資金を支援して、調査・研究を実施していただくというものです。現在、国際チャリティーに参画していただける臨床医を募集しています(カコミ参照)。

日本支部は、まだ第一歩を踏み出したばかりですが、積極的に我が国のう蝕に関わる問題の解決を図り、これまでに達成したう蝕マネジメントをモデルケースとして、世界に発信していきたいと考えています。

 

 

正会員・賛助会員を募集中!

ACFF日本支部は、設立の経緯・設立趣旨・研究プロジェクトにあることを目的に、活動期間は基本的に2018年から2027年までの10年間とし、正会員は100名に限定しています。それはスピーディーな意思決定と、研究成果の達成を目標としているからです。

臨床医を対象にした正会員の会費は、年間20万円です。ぜひご賛同、ご参画をお願いします。

また、団体・企業にも趣旨・活動にご協力いただきたく、賛助会員としてのカテゴリーを設けています。賛助会員の会費は年間10万円です。

 

一般社団法人ACFF日本支部 事務局(学際企画株式会社内)

TEL:03-3981-7281(代表) 050-5530-1160(IP電話)

FAX:03-3981-7284  E-mail:acff@gakusai.co.jp

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