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アメリカの大学院で学んだ 歯科医師としての倫理観を大切に

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日. 29 10月 2017

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船越 栄次(ふなこし・えいじ)1971年、九州歯科大学卒業。1973年Tufts大学大学院卒業、1976年Indiana大学院卒業、1977~1978年Indiana大学准教授。1980年に福岡市で船越歯科歯周病研究所を開業し、現在に至る。日本臨床歯周病学会理事長、日本歯周病学会理事、常任理事を歴任したのち、現在は、日本臨床歯周病学会顧問、インプラント指導医、日本歯周病学会歯周病専門医・指導医を務める。また、アメリカ歯周病学会名誉会員、ITI section Japan Chairman、ITI Board of Directors。

専門分野以外も徹底的に学ぶ
歯周病の専門医になるために、1971年からアメリカのタフツ大学大学院とインディアナ大学院で学びました。どちらの大学院でも歯周病学だけではなく、例えば解剖や免疫、細胞、病理など、歯周病に関連するさまざまな学科を履修します。おかげで、バランスよく幅広く学ぶことができました。
またタフツ大学では、専門医の資格を取得する際には、朝9時から夕方まで、臨床で患者さんを診ます。しかも、一人ひとりの患者さんの治療計画を立て、インストラクターと一緒に治療しながら学んでいくという徹底ぶりでした。
さらに大学教授たちも、研究だけでなく臨床も行っているので、例えば解剖の講義の中に、その教授の臨床での経験談がたくさん入ってきて、より具体的でわかりやすい内容になっていました。臨床と研究がつながっているところが、日本とは随分違うと感じた点です。
そして印象的だったことは、歯科医が患者さんにフランクに接し、とてもわかりやすく説明していたことです。当時の日本では、歯科医師が一方的に上から目線で患者さんに説明するだけだったので、とても驚きました。

 

米国流の感染管理を開業当初から実践
私がアメリカで学んだ一番大きなことは、歯科医師としての倫理観です。特に感染管理に関しては、感染経路を遮断することを徹底的に教えられました。そのため、アメリカの歯科現場では当時からディスポ製品が中心で、血液がついたものの扱いから、器具の滅菌消毒に至るまで、感染対策への考えが行き渡り、しかも実践されていました。患者さんの目に見えないところでも患者さんを守る、これは歯科医師としての倫理観であると実感しました。
一方、当時の日本でも感染管理については学校で学んでいましたが、臨床現場でそれを実践しているところはほとんどありませんでした。コップは洗っただけで次の患者さんに使ったり、エプロンは服が汚れない程度と考え、タオルを使い回して患者さんの胸にかけていました。
私は自分の医院では、アメリカで学んだ感染管理を徹底することにしました。治療器具はすべて滅菌消毒をし、一般に販売されている紙コップを使い捨てにして、エプロンも使い捨てにするためにレストランで使われていたペーパータオルを代用していましたが、これでは水が染みてしまうなど、アメリカで行っていた医療を日本で実践するには、大変な時期がありました。

 

アメリカで見た医療過誤保険の必要性
アメリカは訴訟社会なので、治療において少しでも過失があると、すぐに患者さんに訴えられます。日本では日本人の性格としても、「先生も頑張ってやってくれたんだから」という気持ちもありますが、アメリカでは「いくら頑張っても、結果が伴わなかったり、お金も払っているのだから、しっかり責任はとってもらう」という意識がとても強く、その点では高度で質の高い治療が常に要求されているといえるでしょう。
また、裁判で請求される金額も相当な額なので、たいていの医者は医療過誤保険に入っていました。私がインディアナ大学で教鞭を執っていたときも、大学病院の中で自分の患者の治療を行う際、医療過誤があればやはり訴訟につながるため、当然私も保険への加入を義務付けられていました。
日本でも今後ますますインプラントや審美、補綴などの自費診療が増え、医療過誤訴訟も増えていくでしょう。そのときのために、今後日本でも、アメリカのような医療過誤保険が必要になってくるだろうと思います。

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