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【企業トップに聞く】歯科領域の健康管理を目指し Miと審美治療の製品を開発

根來 紀行 株式会社松風 代表取締役社長 社長執行役員 (ねごろ・のりゆき) 1981年、関西大学大学院工学研究科修了。1981年、松風入社。研究開発に従事し、1985年に光重合型コンポジットレジン「松風ライトフィル」、1994年に光重合型歯冠用硬質レジン「ソリデックス」などを開発。2003年に取締役研究開発部長、2007年に常務取締役研究開発部長。2009年6月から現職。
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水. 14 3月 2018

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豊かな健康長寿社会を築いていくために、人が生きていく上で欠かせない「食」の入り口である歯の健康が重要視されています。そのベースとして治療による天然歯への侵襲を最小限に抑え、審美的な結果を導き出し、患者のニーズを汲み取ることのできる歯科治療、また、治療と予防一体型の歯科医療の展開が提唱されています。この考えを実現する製品を開発し、展開しているのが松風です。今回は根來紀行社長に、コンセプトや製品開発、歯科医療への思いについて伺いました。

患者様の満足と幸せを願い、MiCDをコンセプトに

Dental Tribune Japan:歯科治療はこれまでの欠損を修復する時代から、天然歯をいかに長く保っていくかの時代に入ってきていると思いますが、そうした流れの中での御社のコンセプトを教えてください。

根來社長:近年の歯科臨床は、Mi(Minimal intervention)という、天然歯への侵襲を最小限にするという考え方がベースとなっています。当社の製品である修復材料でいえば、例えば、う蝕治療においては、歯の切削を最小限に留めて修復し、歯質を出来る限り保存していくという考え方です。当社は、そのようなニーズに応えられる製品を提供し続けることを使命としています。ただ、患者様は、単なる機能回復だけでなく、審美的な治療を求められます。材料に審美性が加わることで、真の満足を引き出すことができます。

そこで我が社は「MiCD」(Minimally Invasive Cosmetic Dentistry)というコンセプトを推進しています。つまり、最小限の侵襲による審美歯科治療という考え方です。

現在、コンポジットレジン、ボンディング材、補綴材料や研削材などについては、このコンセプトに沿った製品開発を行っています。それによって患者様が満足され、幸せになれることを願って、日々取り組んでいます。

 

このMiCDを実現するジャイオマーについて、教えてください。

「ジャイオマー」とは、当社が独自に開発したS-PRG(surface reaction-type pre-reacted glassionomer)フィラーを含む製品の総称です。口腔内環境の健全化をお手伝いする各種イオンを徐放するなど、現在の当社製品に不可欠な要素となっています。

その発端は、当社が長年製造販売してきたグラスアイオノマーセメントにありました。グラスアイオノマーセメントはポリアクリル酸と塩基性のガラスを反応させることにより硬化するのですが、その反応によりガラスが含有するフッ素が徐放され、口腔内に良い影響を与えることが明らかになってきました。その特性をコンポジットレジンにも応用できないかということから開発したものがジャイオマーです。

 

つまり、グラスアイオノマーセメントを使った結果として、より予防的な効果が発見されたということですね。

最初は完全にグラスアイオノマー反応させるということで、フィラー全体をグラスアイオノマー化していたのですが、それをすると補強効果が出ません。そこをさらに改善して、コアを多く残して、表層の一層だけをグラスアイオノマー化することにしました。その後、特殊な網目構造の部分でカバーし、反応層を保護するという発想で開発されたのがS-PRGフィラーです。

 

すべての年代の患者様にジャイオマーが貢献

では、S-PRGフィラーの特性について、教えてください。

コンポジットレジンにS-PRGフィラーを入れると、臼歯部にも耐え得る圧縮強度や曲げ強度を発現するほか、審美性の再現にも貢献します。天然歯のエナメル質は光をストレートに通しますが、象牙質は光を拡散します。S-PRGフィラーはそれを調整できる機能を持っています。例えば、1種類のコンポジットレジンで天然歯を修復する場合、エナメル質と象牙質を合成したような光拡散性が必要です。我々のコンポジットレジンは、それを実現することができるため、充填材料が天然歯と同じような質感を持つことができました。

現在使われているコンポジットレジンは、確かに色は歯と合っていますが、基本的にはこれを歯に充填すると、光を透過して暗くなってしまいます。口腔内のバックは暗いため、それを反映してしまうのです。天然歯に近づけるためには、光の反射を調整することが必要になりますが、当社のコンポジットレジンはそれが可能になりました。

 

Miに不可欠な材料としてのコンポジットレジンも、耐久性や色の再現などにおいて高いレベルになりつつあるということですね。

はい。S-PRGフィラーは、口腔内環境の健全化、すなわち、う蝕の予防という点にも貢献できるものとなっています。当社では最初に「ビューティフィル」というコンポジットレジンを開発しましたが、それを使い、多くの先生方に研究していただいた中で分かったことは、元朝日大学の山本教授が学会でもご報告されています通り、プラークがつきにくいという効果があったことです。

例えば、フッ素濃度の高い歯磨き剤を口の中に含むと、その充填するコンポジットレジンはリチャージします。つまり、自分よりも濃度が高い環境になるとフッ素を取り込み、濃度が低くなるとフッ素を出すということで、口腔内でフッ素濃度を調整してくれるのです。これがフッ素リリース&リチャージなのです。

フッ素の役目は歯質を強化することですが、再石灰化にも寄与しています。唾液のミネラルとフッ素の相乗的な効果で、再石灰化ができるといわれていますので、それに役立つということです。S-PRGフィラーは、6種類のイオンを徐放しますが、山本教授の研究の中で、それが相乗的に良い効果を示していることが分かりました。また、その他のS-PRGフィラーの働きには、口腔内を酸性から中性に移行させる酸中和能の発現もあります。

 

S-PRGフィラーを配合したジャイオマー製品をどの領域に展開されているのですか。

保存領域では歯科充填用コンポジットレジンや歯科用ボンディング材に、補綴領域では歯科接着用レジンセメント等に、予防領域では知覚過敏抑制材に、小児領域ではフッ素徐放性光重合型小窩裂溝封鎖材に、矯正領域では光重合型矯正用接着材に、審美領域ではフッ素徐放性歯面コーティング材などに配合しています。

 

歯科は生まれたときから亡くなるまで、すべての年代の方々の健康管理をしていくという時代になり、年代ごとに必要とする歯科領域も変わってきますが、そこにすべてジャイオマー製品が貢献しているといえますね。

まさにその通りです。歯は乳幼児期に萌出されますが、萌出時の耐酸性度はかなり弱いものです。そういうところに例えば歯面コーティング材「PRGバリアコート」を塗布してカバーすることで、乳歯自身がフッ素の効果でう蝕になりにくく、耐酸性度が上がるというのが第一段階です。

もう少し進んでいくと、小窩裂溝に対しては、S-PRGフィラーが配合されている「ビューティシーラント」で予防し、フッ素の効果もあるため、ミネラルも補充されます。ということで、各年代で使われる材料に応用するなど、常に予防を意識しながら歯科治療ができると思います。

このように人の生涯にわたって、歯科領域の健康管理を担う製品を開発していくことで、松風はこれからも歯科医療に貢献していきたいと考えています。

 

インタビューへのご協力、ありがとうございました。

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