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支台築造の選択

上顎左側六番 築造窩洞形成終了。近心側歯質欠損が歯肉縁下に及んでいる(写真提供:坪田デンタルクリニック 坪田有史氏)

木. 14 7月 2016

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支台築造の術後トラブル 支台築造は生活歯、根管処置歯を問わず、失った歯質欠損を補い、補綴装置を装着するための適正な支台歯形態へ回復させ、再機能できる状態にすることが目的であり、高い臨床的意義を有する。 根管処置歯において、支台築造が一因子として術後に発生するトラブル中、築造体からの脱離・脱落、二次う蝕、歯根破折が高い頻度で発生する。 そのなかで歯根破折は重篤な破折を示した場合、抜歯への転帰が少なくないため、最も避けたいトラブルといえる。したがって支台築造では、歯根破折を含め、術後トラブルが発生しないための対策を講じる必要がある。

術後トラブルの対策

概して脱落は保持力、二次う蝕は辺縁封鎖性に起因する。その対策のために、複数のインターフェイスにおいて優れた接着性を有した材料の活用が推奨される。一方、歯根破折からみると、受圧要素の支台歯および支台築造、加圧要素の支台歯環境、すなわち、生物学的ならびに生体力学的な面を考える必要がある。とくに生体力学である咬合力などの加圧要素の影響は少なくなく、さらにそのコントロールを長期にわたり行うことは容易でない。しかし、そのことを念頭においたうえで、各ステージでの可及的な残存歯質の保存、ならびに信頼性の高い歯科接着の活用が重要である。

レジン支台築造と鋳造支台築造

一般的に支台築造方法は、レジン支台築造と金属鋳造による支台築造(鋳造支台築造)の2種類が選択されている。レジン支台築造と鋳造支台築造を比較すると、それぞれに長所と短所があり、ケースに応じて選択する必要がある1)
レジン支台築造は、材料の進歩により象牙質への接着の信頼性の向上と健全歯質を保存できるなどの利点から、その選択頻度が高くなった。レジン支台築造を行う際、象牙質に対する接着を可能なかぎり得ることが最も重要である。そのほか、ボンディング材とレジンコアペースト、レジンコアペーストと既製ポストなど、種々の材料間における複数のインターフェイス(界面)での接着を理解することが、レジン支台築造の有効活用に必要である。
一方、歯質欠損が歯肉縁や歯肉縁下に及ぶケースでは、原則的には鋳造支台築造が推奨されている。しかし、そのようなケースでも、間接法を選択するなどで、レジン支台築造でも可能となるケースも少なくない(図1a〜c)

支台築造の臨床ガイドライン1)

根管処置歯の支台築造方法を選択する際、その基準は明確に示されているとはいえず、臨床的なガイドラインが必要である。
根管処置歯を歯冠部残存歯質量によって分類し、臨床ガイドラインを示したPerozら2)の論文を基に単独歯での修復、あるいはブリッジ、部分床義歯の支台歯における臨床的ガイドラインを作成した(表1)。このガイドラインは、良好な歯質接着の獲得が前提で残存歯質量を歯肉縁上の残存壁数により5クラス(クラスⅠ〜Ⅴ)に分類している。残存壁数の判定基準は、歯質の厚径が1㎜以上、高径が2㎜以上とし、残存壁が全周にあれば4壁残存(クラスⅠ)、1壁が欠損していれば3壁残存(クラスⅡ)となり、全周で厚径1㎜未満、高径2㎜未満であれば、0壁残存(クラスⅤ)と分類する。
ポストの設置は、原則的に保持力を補完するために単独支台歯でクラスⅣ以上、ブリッジあるいは部分床義歯の支台歯でクラスⅢ以上のケースで必要となる。このことは、歯科接着を活用して可能なかぎりポストの設置を回避し、ポスト保持型ではなく髄腔保持型の支台築造(表2)となる方向性を示している。
また、ポスト保持型のケースでは、金属ポストと比較して象牙質に近似した弾性係数を有し、主に歯根破折への対策としてレジン支台築造に併用されるファイバーポストを使用することが推奨され、臨床での有用性は高い(図2a〜d)

【参考文献】
1)坪田有史:接着と合着を再考する ―支台築造を中心に―.日本補綴歯科学会誌,4:364-371,2012.
2)Peroz I, Blankenstein F, Lange KP, et al: Restoring endodontically treated teeth with posts and cores-a review. Quintessence Int, 36: 737-746, 2005.

デンタルダイヤモンド社「日常臨床のレベルアップ&ヒント72」より

 

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