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スピーディな滅菌と、環境に配慮した消毒システム!!

インジケーターを用いて実用濃度0.2w/v%以上であることを確認する

月. 21 11月 2016

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高水準消毒薬の新しい選択肢 オートクレーブが使用できない非耐熱性の器材の消毒には、アルデヒド系の消毒薬であるグルタラール、フタラールが使用されているが、健康被害や時間がかかるなどの欠点がある。アルデヒド系の消毒薬は、感作が原因と考えられる皮膚炎や結膜炎などが報告され、フタラールではアナフィラキシーショックが認められ、2005年1月 に添付文書が下記のように追記された。 「フタラールにて消毒を行った膀胱鏡を繰り返し使用した膀胱癌既往歴を有する患者に、ショック・アナフィラキシー様症状が現れたとの報告があるので、経尿道的検査又は処置のために使用する医療器具類には本剤を使用しないこと」 一方、過酢酸製剤「アセサイドMA6% 消毒液」(ジーシー)は、アレルギーおよび感作の報告がなく、アルデヒド系消毒薬であるグルタラールに比べて消毒時間が短い(図1、表1)。

高水準消毒薬の種類
高水準消毒薬には、アルデヒド系消毒薬のグルタラールおよびフタラール、酸化剤系消毒薬の過酢酸があり、主に内視鏡の消毒および非耐熱性の歯科用器具に用いられている。いずれも、細菌や芽胞細菌、結核菌、真菌、ウイルスに対して効果がある。芽胞細菌に対する効果は、過酢酸>グルタラール>フタラールである。浸漬時間はグラタールが長く、体液が付着した器具では1時間以上浸漬する。フタラールおよび過酢酸は浸漬時間が短い1)
高水準消毒薬は強いタンパク質変性作用をもつため、皮膚刺激および蒸気吸引による健康被害も認められているので、ゴム手袋、防毒マスク、ゴーグル、防水エプロンを用いる。蒸気が拡散しない蓋付き容器を用い、換気を十分に行う(表2)1〜3)

1.グルタラール
グルタラールはアルデヒド基が細菌タンパク質合成阻害、DNA を阻害して消毒効果を示すが、安定である弱酸性(pH 3.8)では消毒力が弱いため、使用時に緩衝化剤を添加してアルカリ性(pH 8.0)として使用する。歯科用の体液が付着していない器具は2w/v%濃度で30分以上浸漬して消毒する。器具に付着した残留消毒薬で粘膜炎などが認められるため、消毒後は十分な水でグルタラールを洗い流した後に使用する。細胞毒性が強いため、生体および環境表面の消毒には使用しない2)
2.フタラール
フタラールはグルタラールと同様にアルデヒド基が細菌タンパク質合成阻害、DNA を阻害して消毒効果を示す。グルタラールと異なって緩衝化剤が不要であり、アルデヒドガスの発生もグルタラール製剤の1/20である。歯科用器具は0.55w/v% 濃度で5分以上浸漬して消毒する。芽胞細菌には短時間では効果が認められない。器具に付着した残留消毒薬でアナフィラキシーショックおよび口腔内着色、粘膜損傷が認められたため、消毒後は十分な水でフタラールを洗い流した後に使用する。細胞毒性が強いため、生体および環境表面消毒には使用しない。
3.過酢酸(アセサイドMA6%消毒液)
ヒドロキシラジカルの生成による細胞タンパクの変性、代謝酵素の不性化細胞膜の破壊、核酸の破壊などが作用機序である。グルタラール、フタラールに比べて優れた消毒効果を示し、芽胞細菌に対しても5〜10分で効果を認める。消毒後は、15秒以上流水下で洗い流した後に使用する。
劣化のおそれがあるため、ゴム製品には使用できない。
10分以上の浸漬は金属の腐食のおそれがあり、ステンレス以外の金属(鉄、銅、真ちゅう、亜鉛鋼板、炭素鋼材等)には使用しない。
アセサイドMA6%消毒液は第一剤(赤ボトル:主剤)、第二剤(青ボトル:緩衝化剤)からなり、精製水と混合して約1週間程度使用できる。インジケーターを用いて実用下限濃度である0.2w/v% 濃度以上あることを確認する(表3)。

アセサイドMA6% 消毒液の使用法
まず、消毒する器具の洗浄を行う。以下、実際の使用法を示す。
①アセサイド専用槽に精製水1.35L とアセサイド第二剤(青ボトル)を入れる(図2)。
②第一剤(赤ボトル:過酢酸6%含有)を入れて攪拌する(図3)。
③インジケーターを用いて実用濃度以上であることを確認する。器具を浸漬する前に毎回確認を行う(図4)。
④洗浄後の器材を浸漬する。ステンレス以外の金属製品、シリコーンゴムを除くゴム製品には使用できない(図5)。
⑤タイマーをセットし、消毒の際は5分間器材を浸漬する(図6)。
⑥器材は、浸漬後15秒以上水洗する。
⑦1週間を目途に使用できるが、0.2w/v%濃度以下になったら多量の水で希釈しながら廃液する(図7)。

アセサイドMA6%消毒液の特徴
他の高水準消毒薬と同様、使用するにあたっては、防護服、ゴム手袋、ゴーグルなどが必要であるが、本剤の最大の特徴は感作およびアナフィラキシーがない点であり、安心して使用できる。過酢酸は酢酸と過酸化水素であり、酢酸と酸素に分解される(表4)。

【参考文献】
1)満田年宏:医療施設における消毒と滅菌のためのCDC ガイドライン2008(第1版). ヴァンメディカル,東京,2009:205-213.
2)白石 正:Lister Club 30周年記念刷子 実践的消毒マニュアル(第1版). リスタークラブ(殺菌消毒剤研究会),東京,2014:14-15.
3)金子明寛: 消毒薬. エビデンスに基づく一般歯科診療における院内感染対策実践マニュアル 改訂版.日本歯科医学会㈼,永末書店,京都,2015:65-75.

金子明寛
東海大学医学部 外科学系・口腔外科学教室

デンタルダイヤモンド2015年11月号「臨床に役立つすぐれモノ」

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