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コンパクトなヘッドサイズと角度の組み合わせで、優れた可視性を実現!!

金. 2 9月 2016

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エアタービンによる高速切削に嫌気がさし、マイクロモーターを使った臨床に代わってから35年ほどが経過した。最初はそのなかに葛藤もあり、エアタービンのほうが早く切削できるのでは? と思いつつ、3倍速や4倍速の増速コントラを使っていた。当然、明るいライトやバー着脱のプッシュボタンなどついていない時代である。縁があり、KaVo の機械で開業することとなり、マイクロモーターが「日の目を見た」のである。その機械は、回転をメモリーすることができたのである。回転数をメモリーして使うということはたいへん大切なことで、フットペダルを踏むだけで記憶させた一定の回転数で切削ができるのである。このようななかで、いままでの主力増速コントラアングルであるKaVo ジェントルパワーLUX 25LPは、5倍速増速コントラの最高峰として多くの先生方に好まれ、使われてきた。表面をプラズマコーティングした斬新な形と機能をもち、私も10年余り愛用し、毎分100,000回転でいろいろな切削をしてきた。

こういったなか、2015年9月に5倍速増速コントラの次世代機種として新たに世に出たのが、「KaVo マスターマティック LUX M25L」である(図1)。このM25Lは、いままでの主力であった25LPの機能を基本的には踏襲しているのだが、よく見てみるとまったく違う5倍速増速コントラに仕上がっている。ヘッド部分の形も25LPに比べると20%も小さくなり、スリムでテーパーが効いて使用する先生の心を読んだ、臨床により適応した形に仕上がっている。この新たな5倍速増速コントラアングルM25Lの素晴らしさをお伝えしたい。

持った途端にしっくりなじむプラズマコーティング
同じプラズマコーティングということで、一見、M25Lの表面も25LPの表面も同じコーティングのように見えるが、実際に右手の指で持ち滑らせるとその違いがはっきりとわかる。25LPでは左手でヘッドを持ち引っ張ると、右の持ち手がスーッと滑っていく。しかし、M25Lでは右の持ち手が滑らず、ピタッと吸い付けられるように指が固着されているという感覚になる。これはいままでに例のない、ハンドピースの持ち手(指)の感覚である。それがプラズマコーティングの工夫であり、凹凸の細かさと量の多さ、溝の深さなどの違いによるものと思われる。これにより、歯の切削時に術者が思うようにバーの先を動かし固定し、角度を変えて自由自在に安心して使うことができる、ということなのである。マイクロスコープで見ると、弱拡大ではM25L(図2)と25LP(図3)に一見大きな違いはなく、どちらも縦(ヘッド方向に直角)方向にプラズマコーティングされているかのように見えるが、24倍でよく見るとM25Lのほうがあきらかに溝が深く、小さい粒子の集合体のように見えることがわかる(図4、5)。

増速コントラをしっかり持って切削できるわけ
強拡大の両者を見ると、あきらかにM25Lのほうが目が粗く感じられる。これはM25Lのほうが溝が深い証拠であり、溝を深くすることにより、一つ一つの小さい粒子はより小さく、より粒子の数を増やすことができ、その表面を際立たせることができるのだろう。これはたいへん重要なことであり、そのことを理解して改めて弱拡大の両者を見比べると、M25Lのほうが画像の濃淡、光と影がはっきり写っており、弱拡大の25LPでは全体に濃淡が薄く、光と影が同調しているようにみえる。これは、同じ場所で、同じ自然光というまったく同じ条件にしてマイクロスコープから得られた画像での違いなのである。このことが、彫りが深くてしっかりした表面なのか、それとものっぺらぼうのテレっとした表面なのかという違いである。このため、右手の三本指で増速コントラを持ち、そして左手でヘッドを持って引っ張ったとき、25LPでは表面積が大きいため指の腹が滑ったのである。M25Lでは右手の三本指の腹が表面の細かい無数の突起と深い溝に入り込み、ここに“しっくり把持”のわけがあったのである(図6)。

ヘッド部分の形態を著しく縮小化
ヘッド部分の形状については、いままでの主力機種だったジェントルパワー25LPと比べるのが最もわかりやすいだろう。バーを入れるヘッドの先端から、上部にある着脱プッシュボタンまでの高さは、LP25が15mmなのに対してM25Lでは14㎜となっており、1mmほど短くなっている。つまり、M25Lが25LPのプッシュボタンの高さ分だけより短くなっていることになる。長さだけでなく、その形状もまったく違っている。25LPでは全体的にヘッドがずん胴のように見え、ヘッドの真ん中くらい(7.5mmあたり)からわずかにテーパーが付いているように見える。しかし、新機種であるM25Lではヘッド本体の上部から徐々にテーパーが付いて細くなり、途中からは急激にテーパーが付いて、先端部ではミニチュアヘッドを思わせるような細い形になっている。小さくて、よりテーパーが付いて細くなっているので、上顎臼歯のどこでも、最後臼歯の遠心でも、下顎臼歯舌側でも、術者は日常臨床の場で「見えながら」「安心して」「安全に」口腔内での切削ができる。術者の臨床に即したM25Lなのである(図7、8)。

騒音なし、振動なしの静音性
M25Lを手に持ってカラ回転するとすぐにわかることであるが、音がたいへん静かで注水の水の音のほうが騒音を出しているようにさえ感じる。30年以上も昔のことであるが、パルプキラーのタービンをやめて、歯に優しい増速コントラを使って歯を削るようになったのだが、その当時でさえタービンのけたたましい回転音に比べて、マイクロモーターに着けた増速コントラの音の静かさは、比べようもないものであった。マイクロモーターに着けたKaVoのコントラ類は増速コントラも含めて、その回転音はもともとたいへん静かなものであり、25LPでさえ切削時に何の痛痒もなく、きれいに短時間で削ることができたのである。2015年の9月から新発売されたKaVoマスターマティック LUX M25Lでは、その静音性は他の増速コントラに比べて群を抜いている。M25LではKaVo独特のトリプルギヤテクノロジーを採用している。これは、マイクロモーターから伝わった回転を、3ヵ所のギヤで先端に着けたバーに伝達するという独特のギヤシステムであり、低騒音・低振動で伝わり、同時に高トルクも伝えている。

注水角度と注水量は申し分なし!
M25Lから注水される1分間の注水量を測ってみたところ、78mLという驚異的な水量が注水孔から注水されている。当然のことだが、マイクロモーター自体の注水量がそれ以上なければ、ヘッド先端からの注水量は78mLも出せないことになる。KaVoによれば、温度を5℃下げるのに毎分50㎤以上出さないと冷やせず、80㎤では5℃以下に下げることが容易とのことである。25LPよりも多量の注水ができるのには、何か新しい方法があるはずである。25LPでは、バーを入れる側の先端がフラットで、注水口もバーの穴の周りのフラットな部分に3ヵ所ある。M25Lでは、バーの穴の周りに斜面を作っており、バーの穴に向かうように傾斜している(図9)。フラットではなく、斜面を与えていることにうまさがあるように思う。注水の穴の数と大きさは同じだとしても、増速コントラにバーを着けて回転させ、バーに注水させたとき、25LPのフラットな面からバーに注ぐ角度より、M25Lの斜面になっているところから注水したほうが無理なく、よりバー全体に注水することが可能であると考えられる(図10、11)。

M25Lは臨床の大きな味方!(図12、13)
M25Lは、25LPよりもヘッドの高さが少し低いのだが、ほとんど同じ分だけバーを把持する強力なチャック部分がある。切削を行う場合、コントラを持つ右手三本指のまっすぐ先の延長線上のバーの場所で削るのが一番効率がよい。そうすると、長いバーより短いバーのほうが作業効率が高いことになる。また、M25Lをシステムにとり入れ、できることならKaVoのユニットにM25Lを着けて機械のメモリー機構を応用し、毎分100,000回転を記憶させ、フットペダルは踏むだけで、調子をとらないで仕事をすることをお勧めする。歯を削る、ポーセレンを削る、金属を削る、レジンを削るなどといった仕事にKaVoの5倍速増速コントラを使い、回転数を決めて、増速、等速、減速のコントラをその場の臨床に即して使い分けることが、患者への心遣いである。補綴治療でも、歯周治療でも、歯内療法でも、外科処置でも歯科医師が歯に、歯髄に、歯周組織に優しい治療を心がけたなら、それは患者にとって大きな福音となるだろう。

 

小嶋 壽
東京都・小嶋歯科クリニック

デンタルダイヤモンド2016年1月号「臨床に役立つすぐれモノ」

 

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