DT News - Japan - 弘岡秀明氏 & ジョバンニ セリーノ氏 対談インタビュー -Peri-implant disease I-

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弘岡秀明氏 & ジョバンニ セリーノ氏 対談インタビュー -Peri-implant disease I-

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水. 17 10月 2012

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弘岡秀明ペリオコース15記念講演会が2012年7月14日(土)、15日(日)、株式会社ヨシダ(東京都台東区)にてスタディーグループJournal Club主催により開催された。 弘岡秀明氏(東京都開業)、歯科衛生士 加藤典氏(東京都勤務)に加えて、スウェーデンから講師として招聘されたGiovanni Serino氏は、イエテボリ近郊街 ボロースにあるBorås Hospital スペシャリストクリニックの歯周病科主任を務め、日常的に歯周病やインプラント周囲病変の治療、研究にあたっている。本対談は記念講演会に伴う特別企画として、インプラント・歯周病治療先進国といわれるスウェーデンで起きている、インプラント周囲病変の問題、今後、日本で起こりうる問題点などを議題に、両氏にお話いただいた。  

【弘岡氏】
セリーノ先生、会えて嬉しく思います。
今日は、インプラント周囲疾患について、いくつかお聞かせください。

【セリーノ氏】
インプラント周囲炎の話でしょうか?

【弘岡氏】
はい。最初の質問は、スウェーデンでのインプラント周囲病変についてです。
スウェーデンでは、インプラント治療が盛んですよね。
スウェーデンの研究報告によると、インプラント治療をした患者の4分の1が、
インプラント周囲炎と呼ばれる、インプラント周囲病変を発症しています。

セリーノ先生の診療所でも、大勢のインプラント治療を受けた患者が、
インプラント周囲炎を罹患しています。これはなぜでしょうか?

【セリーノ氏】
そうですね。1番の問題点は、インプラントの上部構造です。
インプラントの上部構造を装着後、補綴周囲を適切にクリ―ニングが
出来ないことがよくあります。

口腔内には沢山のバクテリアが存在し、
補綴周囲のクリーニングができないと、
粘膜が炎症を起こし、インプラント周囲炎となるのです。
歯周炎と同じ仕組みです。

【弘岡氏】
つまり、インプラント治療がはじまった、初期のころ、歯科医たちは、
インプラント埋入後に上部構造を作る時、クリーニングに注意を向けなかった。

それが現在、インプラント周囲炎多発の原因というわけですね。

【セリーノ氏】
その通りです。

私たちがインプラント治療をはじめた、初期のころ、1970~80年代は、
インプラント手術といえば、フィクスチャーの固着を主眼に置き、
施術者の頭を占めていたのも、フィクスチャーの埋入でした。

その後、症例が増えていくにつれて、別の課題があることが分かりましたが、
当時は上部構造より、手術の方に重点が置かれていました。

【弘岡氏】
先生の診療所であったことですから、
日本でも同じ病気に対する問題が起こり得ると思いますか?

【セリーノ氏】
思います。

ここでの問題は、プロービングによる的確な診断です。
1990年前半では、
プローブでインプラント周辺粘膜を診査する歯科医はあまりいませんでした。

そのため、インプラント埋入後、定期メインテナンスで患者を診てみると、
粘膜炎を起こし……

【弘岡氏&セリーノ氏】
排膿や骨欠損がある!

【弘岡氏】
それは、こういう類の話ですよね。

100年前は、「がん」を「がん」と診断出来なかったために「がん」がなかった。
それと同様に、診査・診断が行われず、インプラント周囲炎と認識されなかった。

【セリーノ氏】
はい。別の問題は、発症を調べるには、数年にわたる患者の追跡調査が必要です。
すぐに顕在化せず5年10年経過してから、病変が現れることもあるからです。

【弘岡氏】
つまり今、スウェーデンで抱える問題は、
インプラント治療が導入されて約20年の日本でも、同じ問題が起こり得ると?
【セリーノ氏】
その通りです。

【弘岡氏】
次の質問ですが、
インプラント治療導入初期のころ、そして今でも、スウェーデンでは、
スクリュー固定式が一般的に使用され、これは、歯科医による可撤性が特長です。

一方、日本は90%がセメント固定式です。この方法による弊害はありますか?

【セリーノ氏】
結論から言うと、スクリュー固定式の方が、上部構造を修正しやすいと思います。
また損傷部位のクリーニングも容易で、インプラント周囲炎を罹患したときでも、
上部構造が取り外せる分、遥かに優れ、簡単に手術ができます。

上部構造を外さず手術するのは大変で、フィクスチャーへのアクセスも困難です。

【弘岡氏】
セメント固定式よりスクリュー固定式が、お勧めなのでしょうか?

【セリーノ氏】
ええ。施術後に上部構造の不具合や、インプラント周囲炎の可能性を考えると、
スクリュー式で固定した上部構造の方が、極めて優れた・・・簡単な処置が可能です。

【弘岡】
なるほど。

Next is,
Dr. Hirooka × Dr. Serino  Peri-implant disease Ⅱ
Dr. Hirooka × Dr. Serino  Peri-implant disease Ⅲ

INFORMATION
弘岡秀明ペリオコース15周年記念講演会に関するレポートは、
医歯薬出版社「歯界展望10月号」に掲載されます。ぜひご覧ください。
タイトル:弘岡秀明ペリオコース15周年記念講演会「インプラント周囲病変への対応」
執筆者:冨岡栄二・鶴屋誠人
掲載誌:歯界展望 120巻4号(2012年10月号) 764-765ページ
 

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