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より速く、より確実なスピード重合を可能に!!

水. 26 10月 2016

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はじめに 現在、臨床で使用されている光照射器は、タングステンランプを光源とするハロゲン照射器、キセノンランプのプラズマ照射器、青色LEDのLED照射器の3つが主流であろう。しかし、新製品として発売されるものは、ほぼ青色LED照射器に限られてきているように思われる。

まだ記憶に新しいが、2014年のノーベル物理学賞を赤崎 勇教授、天野 浩教授、中村修二教授の日本人3氏が受賞した。青色LEDに関しては新聞などでも詳しく報じられたが、この青色LEDについては以前DPN(Dental Products News/ヨシダ)に執筆しているので1)、DPN164号を再読いただければと思う。
また、コードレス照射器の電源はエネルギー密度が高く、再充電可能な二次電池のリチウムイオン電池である。これも吉野 彰氏がノーベル化学賞受賞かともいわれた「すぐれモノ」といえる。実際、工学分野でのノーベル賞とされる全米技術アカデミーの「チャールズ・スターク・ドレイバー賞」を受賞している。すなわち、われわれが手にしている青色LED照射器は、ノーベル賞受賞技術の賜物といってもよい発明品であろう。
DPN168号では、先代の高出力LED照射器「ブルーレックス」について、他の種類の光照射器と比較して、その特性について検証した2)。ブルーレックスは、ハロゲン照射器の1/2程度の照射時間で十分な硬化深度を得られる。
また、LEDの寿命が長いため、ハロゲン照射器のように光強度の低下によってランプを交換する必要がないことからメインテナンスフリーともいわれ、加えてコードレスといった使い勝手のよさもあり、臨床上、有用性の高い器械であることを示した3)
それから6年の時を経て、このブルーレックスを改良したハイパワーLED照射器「DCブルーレックス アルファ」が発売された。そこで本稿では、この新型LED照射器の数々の進化について紹介してみたい。

「DCブルーレックス アルファ」の仕様からみた改良点
DCブルーレックス アルファの仕様は、旧型本体寸法がW26×D32×H250㎜であったのに対して、新型はW23.5×D23.5×H245㎜と小型になっている。これに伴って、充電器本体もW80×D115×H75㎜から43㎜×φ60㎜と、これも小型化している。
また、重量は154gから150gと若干ながら軽量化し、なによりペン型コードレスタイプとしてスリムになったことで持ちやすく使い勝手が向上した。
光源は、青色LED5W×1個と同じではあるが、その光照射強度は旧型の1,000mW/cm2から 1,400mW/cm2と大幅に上昇し、極めてハイパワーとなっている。
さらに、旧型との大きな違いは、照射モードが3パターンあり、選択が可能となったことである。
したがって、DCブルーレックス アルファは単に形が新しくなっただけではなく、その仕様はまったく別な光照射器であるといえる(図1)。

DCブルーレックス アルファの重合性能
DCブルーレックス アルファは、旧型の1,000mW/cm2から1,400mW/cm2と光照射強度が大幅にパワーアップしたことで、従来の光照射時間を大幅に短縮できるとされている。しかし、実際にはコンポジットレジンの種類や形状によって硬化深度が異なることがある。そこで、直径5mm、深さ3mmと5mmの2種類の円柱状の合成樹脂製型板(図2、3)を用いて、DCブルーレックス アルファと旧型ブルーレックスおよびハロゲン照射器の重合時間を検証してみた。なお、ハロゲン照射器はS社製320wのものを供した。
実験に供したコンポジットレジンは、S社製ナノフィラータイプS、G社製ナノフィラータイプR、T社製MFRタイプE、G社製フロアブルタイプUの4種類である。
照射時間は、2〜10秒および適宜段階的に設定した。
照射方法は、照射口を試料に直角にあて、所定の時間光照射した。重合硬化の判定は、試料の裏面に探針で傷がつくか否かで判定した。すなわち、まったく傷がつかないものを○、傷はつくが表面のみのものを△、探針が深く入りあきらかに未重合であるものを×とした。
図4は、光照射後の試料を探針で△と×に判定したものである。
それぞれの代表例を次に示す。図5は○とした例、図6は△、図7は×とした例である。
これらの判定に基づき、3種類の光照射器の重合性能(時間)を表1〜3に示した。
DCブルーレックス アルファ(表1)については、厚さ3mmでは照射時間2秒でもナノフィラータイプSの1種類に△までの重合がみられ、4秒後には試料底部までの硬化が確認できた。また、フロアブルタイプでは8秒、他のペーストタイプでも10秒後には重合が認められた。すなわち、窩洞の深さ3㎜までは10秒間照射すれば、コンポジットレジンの種類にかかわらず、重合硬化が認められた。
しかし、5mmの厚さになると事態は変わってくる。まず、最短4秒で硬化した試料Sは、倍の8秒でも完全な硬化が得られず、硬化には10秒を要し、他のレジン試料ではいずれも硬化を認めるに至らなかった。
ブルーレックス(表2)と比べてみると、厚さ3mmで最も早く硬化したSでは6秒だったものの、10秒までの照射時間で硬化したのはフロアブルタイプのUのみであり、RとTは△までの重合状況であった。厚さ5mmでは、△と判定したものがSとUのみであり、他はすべて未重合のままであった。
また、ハロゲン照射器(表3)では、10秒間で光照射側で硬化していても裏面はすべて×と判定した。内蔵タイマーも30秒に設定されており、重合時間は厚さ3mmでは最短で20秒、最長150秒を要した。5mmでは最短で60秒、150秒の光照射でも2種は硬化を認めなかった。このように、ハロゲン照射器での重合は高出力LEDと比較して、硬化が得られるまでの時間が1桁も2桁も異なった。
以上の結果から、コンポジットレジンの重合硬化は種類や性状など、製品間によって大きな差異があり、飛躍的に重合性能が向上しているとは言っても、一様に照射時間を決めることは重合不足を招くおそれもあることを認識しておく必要がある。実際の臨床においては、窩洞の深さが5mmを超えることはまずないであろうし、3mmの深さも稀である。DCブルーレックス アルファを日常臨床で使用する場合、10秒間照射すれは重合硬化に問題はないと思われる。しかし、これだけ高機能で大出力の照射器でも、ペーストとフロアブルのレジン性状の相違ばかりでなく、製品の組成によって差異が生じてくることから、臨床での不快事項を招かないためにも、あらかじめ応用しようとするレジンの硬化時間を確かめておく必要がある。また、もはやハロゲン照射器では迅速な治療が難しい状況にあることを再認識させられた。
これらの結果を踏まえて、日常臨床において、DCブルーレックス アルファは、高出力LEDとして極めて有用性の高い製品と思われた。さらに、照射モードが3パターンあるなど、ブルーレックスにはなかった機能を有している。この照射モードの使い分けについては、別の機会をもちたい。

【参考文献】
1)森川公博:高出力LED照射器の臨床応用について
(その1・LEDを考える).DPN,(株)ヨシダ,164:10-12.2007.
2)森川公博:高出力LED照射器の臨床応用について
(その2・LED照射器の特性).DPN,(株)ヨシダ,168:12-14.2008.
3)釜田 朗,森川公博,板倉慧典,齋藤高弘:各種光照射器の特性─高出力LED照射器との比較─.奥羽歯学誌,38:207-212,2011.

森川公博
福島県・森川歯科クリニック

デンタルダイヤモンド2016年8月号「臨床に役立つすぐれモノ」

 

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